社説/22年度政府予算案 「成長と分配の好循環」が見えない

(2021/12/27 05:00)

政府の2022年予算案は、一般会計の総額が107兆5964億円(対前年度当初比0・9%増)と10年連続で過去最多を更新した。ただ岸田文雄内閣が提唱する「成長と分配の好循環」が、この予算案に反映したとは言い難い。

実質的な政策経費である一般歳出は前年度当初比0・7%増。増加分のほぼすべてが社会保障費だ。他の経費の増加は全体で330億円に抑制。その中で、かろうじて科学技術振興費を同1・1%増と過去最高にしたのが目立つ程度だ。

デジタル化については、各省庁共用システム費用をデジタル庁に一括計上して集約。中小企業向けは利子補給など政策金融を削減し、「下請Gメン」増員などに予算を振り向けて中小企業対策費全体では0・8%減と、わずかな減少幅にとどめた。

歳入面では予想される税収増の大半を国債の償還に充てる。これにより、国の財政が借金に頼る公債依存度を34・3%と、ほぼコロナ禍以前の水準に戻している。ある程度、財政当局の努力と言えよう。

財務省幹部は「限られた財源の中でメリハリをつけた」と説明する。しかし各省庁が要求した主要政策の多くは、6日に成立した21年度補正予算で前倒ししている。先端半導体の国内拠点確保6170億円や、中小企業生産性推進革命2001億円などの重要施策も補正だ。防衛関係費のように、補正と当初予算を加算すれば概算要求を大きく上回る費目もある。

本来、補正は“緊要性”が求められる政策を当初予算に付け加えるもの。しかし近年は政策実行の加速が求められ、各省の施策は当初予算を待たずに補正計上することが通例化した。コロナ禍で巨額の補正を編成した21年度はそれが著しく、22年度当初予算案からは政府の方針が見えなくなっている。

補正を機動的に運用するためには、予算案の説明も国会の審議も補正に重点を置くべきではないか。当初予算に補正を加えた「16カ月予算」ベースで比較する方が適当かも知れない。政府の説明努力を求める。 

(2021/12/27 05:00)

総合2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい空気圧の本

今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい空気圧の本

技術士第一次試験「機械部門」専門科目過去問題 解答と解説 第9版

技術士第一次試験「機械部門」専門科目過去問題 解答と解説 第9版

誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣

誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣

電験三種 合格への厳選100問 第3版

電験三種 合格への厳選100問 第3版

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン