社説/深刻化する少子化 生産性向上・女性支援を急げ

(2022/6/10 05:00)

少子化・人口減少の波が激しさを増してきた。2021年に生まれた子どもは約81万人で過去最少。国の推計より6年も早いペースで減少した。若者の将来や経済基盤への不安を払拭(ふっしょく)することで少子化の波を緩和したい。併せて、労働生産性や労働参加率の引き上げ、外国人労働者の受け入れ拡大など総動員の施策で労働人口の減少にも対応する必要がある。

政府は1990年代から少子化対策に取り組んできたが、成果が上がっていない。岸田文雄政権がまとめた「新しい資本主義」実行計画などを土台に、結婚・出産を阻む要因を一つひとつ丁寧に解消したい。

実行計画では24年度までの3年間で4000億円規模を投じ、非正規雇用者を含めた能力開発を支援する。学び直しや兼業の推進、再就職支援などでスキルアップを後押しし、若者の経済基盤が強化されれば結婚後の将来不安は緩和されよう。労働者の4割近くを非正規雇用者で占める現状も是正が必要だ。

4月から不妊治療の保険適用が始まった。だが妊活と仕事を両立できる企業の支援がなければ制度は使われない。企業には一段の理解と支援を求めたい。

また女性に家事と仕事を両立できる多様な働き方を求める権利を与え、企業がそれを認めないなら理由の説明を義務づけるなど、英国の「フレキシブル・ワーキング法」を参考に踏み込んだ改革も検討してほしい。

他方、減り続ける労働人口への対応も急務だ。人工知能(AI)やデジタル技術を駆使した生産性向上はもとより、対内直接投資の促進や外国人労働者の受け入れを推進する必要もある。外資の対日投資が経済の効率化とイノベーションを加速させる。煩雑な行政手続きの見直しや電子政府の遅れなどに早急に取り組むべきだ。外国人労働者が日本に来るインセンティブも構築する必要がある。

女性の労働参加率も引き上げたい。男性の育休取得を「権利」から「義務」に変える大胆な政策も議論するべきではないか。いずれの課題も容易ではないが、先送りする時間はない。

(2022/6/10 05:00)

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