産業春秋/寒露の秋

(2022/10/6 05:00)

一葉落ちて天下の秋を知る―。秋分を過ぎ、陽の短さや夜風の冷たさを感じるようになる今ごろ、好んで引用される名句である。どこかもの悲しく、澄み渡った空気を思わせる。

この句の出典は詩歌ではない。中国古代・前漢時代の思想書『淮南子(えなんじ)』だ。秋が深まる寒露(かんろ)の候、落葉の感慨を詠じたというよりも、小さな前触れから大きな動きを予知する先見性の例とされる。

相場の世界では「靴磨きの少年」の逸話がよく知られる。米ウォール街で、資金のない子どもまで株の話をするようになれば市場過熱、売り時のサインなのだという。散文的ながら「一葉落ちて」に通じるものがある。

米欧がインフレ封じ込めに動く中で、日本は難しい道を歩んでいる。急激な円安でも日銀は大規模緩和を続ける。政府による為替介入は時間稼ぎに過ぎない。日本の政策判断のきっかけを、世界が注目している。

秋の次には、一定の周期で必ず冬が来る。それが分かっているから天下の季節の巡りは予知しやすい。変数の多い景気動向をとらえるには、もっと多角的なセンサーが必要だろう。実りの秋は霜降へ向かう秋冷の季節でもある。環境の変化には、常に敏感でありたい。

(2022/10/6 05:00)

総合1のニュース一覧

おすすめコンテンツ

今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい空気圧の本

今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい空気圧の本

技術士第一次試験「機械部門」専門科目過去問題 解答と解説 第9版

技術士第一次試験「機械部門」専門科目過去問題 解答と解説 第9版

誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣

誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣

電験三種 合格への厳選100問 第3版

電験三種 合格への厳選100問 第3版

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン