社説/国益を考える(1)日本の弱さ克服する節目の年に

(2023/1/1 05:00)

 新年を迎えた。2022年に露呈した日本の弱さと課題を克服し、いかに国益を最大化していくか―。23年はその「みちしるべ(道標)」を模索し、実践に移す節目の年としたい。

 世界を分断する中国の覇権主義的な動きとロシアのウクライナ侵略は、東アジアの安全保障の危うさと、資源に乏しい日本の厳しいエネルギー事情を浮き彫りにした。防衛費の大幅増額と反撃能力の装備なしに東アジアの安保は担保できず、原子力発電所政策も大転換に至った。

 対中国では防衛力強化で抑止力を高めつつ、意思疎通を継続する外交を最優先に偶発的な衝突を回避したい。また安全確認できた原発の再稼働と稼働延長、中長期的には新増設を後押しし、安定供給体制を確立することが政権には求められる。

 ただ、これら施策の実施には前提条件が付く。5年で43兆円の防衛費や財源確保の増税を決めるプロセスは拙速の感を否めない。1月召集の通常国会で国民に丁寧に説明した上で増税財源の審議を深めたい。原発もまた、使用済み核燃料の最終処分地の選定や次世代型原発の安全性などで説明を尽くし、東日本大震災後の原発への抵抗感を緩和させる必要がある。政府は次世代燃料の水素・アンモニア利用を促す産業支援を実施する方針もあり、多様な手法で脱炭素化と安定供給を両立したい。

 22年に進行した円安は日本経済の国際競争力の弱さを突き付けたほか、同年の出生数は初めて80万人を割り込むなど少子化も深刻化している。失われた30年に象徴される低成長と少子化の解消に向け、カネとヒトをいかに配分するのか。人材投資と技術革新を促すほか、子ども予算倍増に向けた財源をどう確保するかも23年の課題となろう。

 23年もウクライナ情勢の先行きは読めず、世界経済は減速から後退への局面変化が懸念される。米欧のウクライナ支援疲れが戦況に影響を及ぼすようなことがあってはならない。先進7カ国(G7)議長の日本は米欧および新興国との結束強化に努め、国際秩序の再構築を目指す重責も果たしてもらいたい。

(2023/1/1 05:00)

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