(2023/7/19 05:00)
政府は23日から、先端半導体の製造装置23品目を輸出管理の対象に追加する。名指しはしていないものの中国への輸出を厳格化する狙いがある。中国による軍事利用を防ぐ上でやむを得ない措置と言える。だが日中は安全保障と経済の均衡を保ち、共存する必要がある。軍事転用の懸念がない装置にまで影響が及ばないよう、日本政府には厳格な運用が求められる。
日本政府は外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく経済産業省令を改正し、23日に施行する。回路線幅14ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の先端半導体に対応する装置が対象。米国など42カ国・地域への輸出手続きを簡素化する一方、中国などへの輸出は許可制となる。
日系10社程度の対中輸出が影響を受けるが、先端半導体に対象を絞るため影響は限定的とされる。軍事転用の恐れがない装置や汎用品の輸出に影響が及べば日本の貿易上の実利が損なわれるため、日本政府は日系企業との意思疎通を深めてほしい。
日本は米国に同調し、半導体製造装置の輸出管理に動く。米国は2022年10月に先端半導体や製造装置、関連人材の中国との取引を事実上禁止。中国は先端半導体が欠かせない人工知能(AI)やスーパーコンピューターを駆使し、軍事技術の高度化を狙っており、米国が安保の観点で同半導体の供給網を遮断するのは適切な措置だ。
ただ保護主義を強めるバイデン米政権が、経済安保の枠を超えて中国規制を強化する可能性を否定できない。日本はむしろ安保以外で中国との関係を強化したい。日中は22年11月に3年ぶりの対面での首脳会談を実現し、関係改善への一歩を踏み出した。日中は意思疎通を継続し、建設的な協議を重ねたい。
中国は一連の半導体規制に対し、重要鉱物ガリウムなどの輸出規制の報復を講じると発表した。だが経済が停滞する中国は報復合戦を避けたいのが本音。中国外交トップの王毅政治局員は14日に林芳正外相と会談し、日中関係の改善に期待を示した。日中は協力可能な分野を模索し、共存の道を探りたい。
(2023/7/19 05:00)
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