社説/最低賃金1500円目標 政策の実効性向上へ定期検証を

(2023/9/29 05:00)

各都道府県で10月から順次、最低賃金が引き上げられる。全国加重平均は前年比43円増の時給1004円で、初めて1000円を突破する。増加額も過去最高だ。岸田文雄首相は2030年代半ばまでに同1500円を目指すという。だが実現するには23年度並みの増加額を継続する必要がある。策定中の経済対策や現行の中小企業政策で果たして達成できるのか。定期的に政策の効果を検証・修正し、実効性を高めてもらいたい。

中小企業は23年春闘で意欲的に賃金を引き上げた。連合によると、従業員300人未満の企業の平均賃上げ率は3・23%に達し、1999年以降1%台だった伸び率が大幅に上向いた。業績が好調だからではなく、賃上げをしなければ人材を確保できないからだ。物価高や、社会的に賃上げ意識が共有されたことも中小企業の背中を押した。

東京商工会議所によると、23年度に賃上げを実施した企業のうち、業績が「横ばい」「悪化」は56・1%と過半を占めた。業績改善の裏付けがない、人材確保のための「防衛的賃上げ」であることに留意したい。

政府は10月中に策定する経済対策に、賃上げを促す減税措置を盛り込む。23年度末に期限を迎える賃上げ促進税制を延長・拡充するほか、同税制の恩恵を受けない赤字企業にも賃上げを促す「繰越控除制度」を創設する。賃上げを実施した年度以降に黒字化すれば、それまで赤字で利用できなかった税額控除が適用される。賃上げを条件に、工場建設などの大規模投資や省人化投資も支援する。懸案の価格転嫁問題についても年内に指針をまとめる。賃上げ分の転嫁状況を業界ごとに実態調査し、業界団体に自主行動計画の改定・徹底を求めるという。

政府はこれら対策を定期点検し、持続的な賃上げを実現する施策を模索し続ける必要がある。他方、中小企業には自己変革が求められる。人工知能(AI)やデジタル変革(DX)による生産性向上、さらに新たな価値創造による価格決定権の確保など、中長期の視点で強固な収益構造を追求してほしい。

(2023/9/29 05:00)

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