(2023/11/1 05:00)
日銀は30、31の両日に金融政策決定会合を開き、長期金利が1%を一定程度超えることを容認した。これまでは1%を事実上の上限としたが、これを「1%をめど」とした。日銀は想定外の長期金利の上昇に対し、金利を抑えるための大量の国債購入のペースを緩め、市場機能に配慮する。2024年春闘次第ではマイナス金利政策を解除するとの見方もあり、今回の政策修正が金融政策の正常化に向けた布石となるかを注視したい。
日銀はイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を再修正した。7月にYCCを修正し、容認する長期金利の上限を0・5%程度から1%に引き上げている。だが米国の長期金利上昇につられて日本の金利も上昇し、31日には新発10年物国債の利回りが一時0・955%と1%に迫っていた。
ただ1%ラインを死守するため、日銀が大量の国債を購入し続ければ市場機能を歪める。YCCの再修正は市場への配慮と同時に、円安進行を一定程度抑える効果を期待できる。半面、YCCによる金利操作が限界に近いとも映る。24年春闘を見極めた上で、マイナス金利政策と同時にYCCの解除も視野に金融政策の正常化を探りたい。
長期金利の上昇容認は企業の資金調達や住宅ローンに影響が及ぶ。急速な金利上昇局面では国債購入で適切に対応したい。
日銀がまとめた4―6月期の資金循環統計によると、国債(国庫短期証券を除く)の日銀保有比率は53%に達する。日銀による国債購入を減らすことで政府が安易な国債発行を慎み、財政規律の順守につなげることが求められる。YCCの再修正で長期金利が上昇すれば国債の利払い費も増額する。政府は日銀の政策修正を財政健全化に向けた契機と位置付けてほしい。
米国の政策金利は歴史的な高水準にあり、長期金利は5%に迫る。堅調な経済を背景に金融引き締めが長期化することが想定される。為替に影響する日米金利差の行方にも警戒したい。
(おことわり)「総合経済対策(中)」は2日に掲載します。
(2023/11/1 05:00)
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