(2024/2/26 05:00)
ロシアのウクライナ侵攻から2年が経過した。米欧の軍事支援の遅滞からウクライナ軍は砲弾など武器が不足し、守勢に立たされている。米欧の「支援疲れ」でロシアを利する事態は何としても避けたい。ロシアの武力による現状変更を歓迎するのは権威主義国家だけであり、台湾統一も勢い付きかねない。11月の米大統領選でトランプ氏が返り咲けばウクライナ支援が途絶える可能性もある。侵攻3年目は国際秩序が脅かされる正念場を迎えると覚悟したい。
20カ国・地域(G20)外相会合と先進7カ国(G7)首脳オンライン会議が先週末に開かれた。G7はロシアへの制裁強化とウクライナへの支援継続で合意し、ロシアに軍事支援する北朝鮮とイランを批判。一方、G20外相会合ではG7以外の国はロシアを名指しで非難せず、戦闘自体を批判する中立的な立場を貫いた。国際社会で発信力を高めるグローバルサウスに対し民主主義陣営は価値観を押し付けず、経済や環境などの課題解決を後押しする実利主義で連携強化の道を探る必要がある。
欧州連合(EU)は1日、今後4年間でウクライナ支援に最大500億ユーロ(約8兆円)を拠出する予算を承認した。米国のウクライナ支援の滞りに危機感を持ち、結束を固めたと評価したい。だが経済成長が鈍化する中、支援の足並みが乱れる懸念がつきまとう。G7とEUは、経済制裁で凍結したロシア中央銀行の資産約42兆円の利息収入の活用を検討する。ロシアによる報復は必至だが、ウクライナ復興までの長期的支援を見据え、あらゆる手段を講じたい。
ロシアと中国の23年の貿易総額は2400億ドル(約35兆円)と過去最高を更新し、中国の輸入がロシアの戦費を支える。中国がロシアを支え続ける限り、米欧はウクライナ支援の継続が欠かせない。だが米議会では、ウクライナ支援を盛り込んだ緊急予算案が通らない。バイデン大統領の足を引っ張るトランプ氏に共和党が同調しているためだ。米議会が早期に妥協点を見いだすことが、ウクライナ侵攻3年目の最大の課題になる。
(2024/2/26 05:00)