(2024/5/9 05:00)
イスラエルとイスラム組織ハマスの交渉が、重大な局面を迎えている。パレスチナ自治区ガザをめぐる停戦仲裁案を受け入れたハマスに対し、イスラエルはガザ撤退を含む案に反発し、ガザ南部ラファへの本格的な地上侵攻を見据える。ラファには約150万人が暮らす。ハマス壊滅を目指すイスラエルが地上侵攻に動けば大惨事となるのは必至だ。イスラエルは国際人道法を順守し、地上侵攻を自制することが強く求められる。
イスラエルのラファ侵攻で中東情勢が一段と悪化すれば、米大統領選の行方や、世界経済に及ぼす影響も憂慮される。
イスラエルとハマスの仲介役であるカタールとエジプトが停戦案をまとめた。停戦は42日ずつの3段階で進める。ハマスがイスラエルの人質を段階的に解放する一方、イスラエルはパレスチナ人の釈放とガザ撤退を進め、最終的にはガザ復興を視野に入れる。だがハマス壊滅を目指すイスラエルのネタニヤフ首相は譲歩せず、ラファでの軍事戦略を継続する意向を示す。
バイデン米大統領も、ネタニヤフ首相に自制を求め、イスラエルへの弾薬供給も停止したと伝えられる。米大学の反戦デモが相次ぎ、米大統領選をめぐる若年層の支持を考慮した側面もある。ただ極右政党と連立政権を組むネタニヤフ首相に翻意を促すのは難しい情勢にあり、ガザの行方は予断を許さない。
ハマスは2023年10月にイスラエルを奇襲。民間人を虐殺し、人質にも取るハマスの蛮行は許されない。だがイスラエルの過剰防衛を国際社会は問題視し、3月の国連安全保障理事会では即時停戦を求める決議が採択された。ガザ地区で犠牲になった約3・5万人のうち、女性や子どもの非戦闘員が多数含まれ、地域の飢餓状態も深刻化している。即時停戦し、直ちに人道支援を拡大する必要がある。
イスラエル国内でも人質奪還が進まず、総選挙の早期実施を求める抗議デモが続く。イスラエルとパレスチナが共存する2国家解決も拒否するネタニヤフ首相の退陣なしに局面は変わらないのか、憂慮に堪えない。
(2024/5/9 05:00)
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