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沖永良部シンポを開催、次世代につなぐ美しい島づくりを考える—モノづくり日本会議

(2017/10/13 05:00)

  • 島の子どもたちが描いた絵の前で島の未来を議論

第8回沖永良部シンポジウム(主催・酔庵塾、沖永良部シンポジウム実行委員会)が、9月9日に鹿児島県沖永良部島で開かれた。モノづくり日本会議ネイチャーテクノロジー研究会が開催協力した。テーマは「子や孫が大人になったときにも光り輝く美しい島つくり~こども・島・お金の自足を考える~」。今回は島の資源の活用に加え、地域金融による「お金の自足」について島内外の参加者で議論した。

基調講演1/地球村研究室代表 東北大学名誉教授 酔庵塾塾長 石田 秀輝氏

「子や孫が大人になったときにも光り輝く美しい島つくり―今後考えなければならないこと―」

■憧れの島へ ローカルこそ豊かに

これから2030年という、大きな節目を超えられるかを考えなければならない。石油価格が現在の2倍になるとされ、輸入価格も上がる。温暖化による平均気温上昇で作物は採れず、生物も大絶滅する。途上国の成長は鈍くなり、均一化によるグローバル資本主義が限界を迎えると考えられている。

都会に食糧やエネルギーを送っているのは地方だ。そのため、ローカルが豊かでなければ日本の豊かさはない。都会と地方の位置関係が変わらなければならない。地方は決して東京の受け皿ではない、という時代を我々がつくる必要がある。

原点は自足にある。島でできることを少しでもやろうということ。補助金で他地域から人を奪っても豊かにはならない。人口減少の制約を認め、その上でわくわくできる楽しい暮らしを考えるべきだ。

沖永良部島には豊かな文化の価値観が残る。「自然」の上に「食」「集い」「遊び」の柱が立ち、「仕事」が横串を刺す。ワークとライフがオーバーラップしている。「しまんちゅ(島民)」が自足することで仕事は増え、お金も島内で回る。島民が島の魅力を学び、島民のための観光に取り組めば、結果として憧れの島となり外から人がやってくる。

お金の話は避けてきた。だが、いろいろと具体的に動き始めたことで、お金がないために事業を断念することも出てきた。そこでローカルファイナンスの仕組みをつくりたい。島でのお金をどう考えるか議論したい。

また、これまで島で活動してきた8年の過程を教科書としてまとめる。他地方や南太平洋の島しょ国に考え方を広げたい。道は長いがお付き合いいただきたい。

基調講演2/場所文化フォーラム代表幹事 吉澤 保幸

「『心豊かな暮らし』を支える温かなローカルマネーフローの創出へ」

■地域創生へ基金立ち上げ議論を

日銀で20年間、グローバルマネーに関わり、ここ15年は場所文化フォーラムを立ち上げてローカルマネーフローをいかにつくるか模索してきた。ようやく時代と主張がかみ合い、具体的な形として全国で実装しつつある。

日本再生のアプローチには四つの連立方程式がある。それは地域内資源の循環としての「エコビレッジ構想」、地域資源の再創造である「森里川海プロジェクト」、地域人財の育成とシビックプライドの醸成である「子ども達、若者が主役」。そして、新たな公共と温かいお金として「住民主体による新たなまつりごと」である。

最終的に「新しいまつりごと」、つまり地域で金融インフラをつくることが、地域創生を持続的に回す仕組みだ。従来型金融は限界で、補助金に頼る行政も無理になった。

地方は都会に資源を吸い上げられ、補助金で戻ってくる依存の構造にある。また都会のモノを買うことで、お金が地方から外に出る。エネルギーも同様で、エネルギー自給は地域が自立するための一丁目一番地だ。

やるべきことは資源の再生。時間はかかるが、その過程で地域創生ができる。農林漁業、環境、教育、医療介護はグローバルマネーに翻弄(ほんろう)されてはいけない。

金融の世界ではESG(環境・社会・企業統治)重視の投資やローカルファイナンスなど大変革が起きている。沖永良部島はその変革の最先端にある。

島の未来をつくる事業構想が多く具体化し、補助金ではないお金が必要とされている。孫の代に向けた、社会的投資をしたいというニーズも表出している。今こそ、基金の立ち上げを真剣に議論するフェーズ。大人には3世代後の未来に向けて果たす責任がある。

基調講演3/プラスソーシャルインベストメント社長 野池 雅人氏

「お金の流れが地域を変える―京都発ローカルファイナンスの実践から―」

■地域の事業創出誘発を理念に

金融会社を設立し、事業を進めているが、もとは金融とは関係のない民間非営利団体(NPO)での活動がスタートだった。紹介する3事例の一つ目は、2008年に設立した京都地域創造基金。NPO活動の中で、人とアイデアはあっても活動を良くするお金が得にくいことを痛感して設立した。

地域では金融機関のお金が域内に回らず都会へ流出する。そこで、地域に社会的商品をつくり、お金を循環させる結節点が必要だった。3000円の寄付を市民1000人から集めることから始めた。09年に公益財団法人となり、11年の東日本大震災では地域基金の必要性が顕在化した。

2例目はプラスソーシャルという、社会的投資を行う非営利型の株式会社。エネルギー問題に正面から取り組み、兵庫、和歌山、京都を中心に7カ所で太陽光発電と小水力発電を運営している。

民間の投融資だけで補助金に頼らず運営。利潤は株主に分配せず、公益財団や自治体の景観保全活動などに寄付する。龍谷大学から総額7億2000万円の社会的投資を受けることにもなった。

3例目が社会的投資の専業企業として16年に設立したプラスソーシャルインベストメントだ。これまでの私募債での出資ではなく、より多くの個人や法人がファンドに出資できる仕組みをつくった。

地域の事業創出を誘発するお金の流れをつくることが理念だ。8月に金融免許が下り、全国で寄付や投資で応援できるようになった。投資家へのリターンは1%ほど、商品で返すこともある。債権や証券として地域金融機関での販売も見込む。

金融は互いにお金を融通して助け合うことで生まれた。そのような金融を取り戻そうというのが、ローカルファイナンスや地域金融など現在の流れだと考えている。

分科会、パネルディスカッション

■「自給自足」軸にソーシャルビジネス

  • 東北大学准教授・古川氏

分科会は「食」「エネルギー」「教育」の3テーマで議論した。

教育分科会では、学生数減少の懸念に対して、島外からの留学などの解決案が挙がった。また島独特の研究テーマに対する研究者を招き、小中学校で講義をしてもらうなど学び方の転換と併せた提案もあった。

エネルギー分科会では、持続可能で心豊かなエネルギーや住民意識を議論。島内のエネルギー効率向上を必要とする一方、「島民に我慢を強いるのではなく、楽しく共感を得られる提案をすべきだ」と結論づけた。

食分科会は農家レストランや直売所などの施設を通じた生産物の情報発信と同時に、新しい特産品づくりが必要と提言した。

続いて、古川柳蔵東北大学准教授をファシリテーターに、講演者や分科会発表者らによるパネルディスカッションを開催。冒頭、古川氏は「自足に向けて、バックキャストの視点で限られた資源をどう活用するかが共通して議論された」と分科会を総括した。その後、ソーシャルビジネスの認識や、地域基金の設立後の具体的運営に議論が及んだ。

吉澤氏は「沖永良部で行おうとしているのは『自立自足』。自治の精神でそろばんを弾く。このそろばんこそがソーシャルビジネス。そこにいかに温かなお金を流せるかだ」と提言。

また野池氏は「島外からも寄付できる。遠くにいるからこそ寄付する人もいる。組織は充実していなくても、寄付者とのやりとりを含めてコミュニティー財団の役割になる」とアドバイスした。

終わりに古川氏は「ビジネスは一人ではできない。新しいファイナンスでスピードアップも可能になる。仲間が増えると関わりも増える。それが進む方向だろうと理解できた」とした。加えて「(こどもワークショップで)多様な価値観が描かれ、島のアイデンティティーは自然だと実感した。これを力に進んでいく必要がある」とシンポジウムを締めくくった。

ローカルファイナンス研究会

■島の力を集結

酔庵塾の第2回「ローカルファイナンス研究会」が分科会とともに行われ、島にとって地域金融の仕組みが必要との結論に達した。18年9月の設立に向けて活動していくと宣言された。

かつて島には「イイタバ(結)」と呼ばれる仕組みがあった。貨幣経済とも等価交換とも異なる相互扶助のシステムだが、グローバル経済からここに100%転換することは現実的に難しいと判断。現在の金融システムに限界を感じている部分について、切り替えていく方針とした。

プラスソーシャルインベストメントの野池社長からは、寄付金の一部を運営組織の経費に充てられる点や、個別具体的な事業への寄付だけでなく、組織自体へ寄付する方法があるとの助言を受けた。

今後、研究会では財団設立にあたっての基本財産300万円を集める適正人数の決定や、メンバー選定などを進めていく考えだ。研究会のファシリテーターを務めた古村英次郎さんは「島の力を集結させましょう」と会場に力強く呼びかけた。

(2017/10/13 05:00)

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