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4月18日は「発明の日」/特許庁の促進政策

(2018/4/19 05:00)

業界展望台

中小企業も積極活用を

中小企業による2016年の特許出願件数は3万9624件(前年比10%増)と5年連続で増加し、10年ぶりの高水準を記録した。国内からの特許出願件数に占める中小企業の割合は11年の10.8%から16年には15.2%まで広がった。ただ、中小企業の出願割合が約26%にのぼる米国と比べて低水準。中小企業の知財の活用を促す方策について特許庁の取り組みを追った。

特許料金 一律半減

国内の特許出願は漸減傾向にあるものの、中小企業による出願件数は11年以降、反転している。特許出願件数に占める中小企業の比率は相対的に増えている。だが、企業数の99.7%を占め、雇用の7割、付加価値額の過半数を担っていることを踏まえると、中小企業の知財活動は不十分と言える。

事業活動における知財取得・活用のメリットは大きい。技術力の信頼性を裏付け、対外的なPRにも役立つ。他社にライセンス供与することで販路拡大にも貢献する。自社の保有技術が“見える化"され、一段上の技術開発を志向する好循環も生まれる。他社や大学との共同研究に発展する可能性も広がる。

それだけではない。開発成果を客観的に評価でき、報奨制度や表彰制度を組み合わせ、研究者の自信や意欲向上につながる。特許庁の調査では、特許権所有企業の方が業績は堅調で、経営にプラスの効果があることが明らかになっている。

知財のすそ野拡大が道半ばなのは、経営者や金融機関の知財に関する意識が低く、相談窓口が分からないなどいくつかの要因が考えられる。大学の知財意識を変革する必要性も指摘されるところだ。

特許庁は中小企業・ベンチャー企業の知財活動を活性化するいくつかの仕掛け作りを進めている。

目玉は特許法改正に基づく中小企業の特許料金の一律半減だ。現行の特許料金軽減制度を出願の際に利用する中小企業は約3000社にとどまり、十分に活用されていない。減免対象を広げ、手続きを簡素化することで、制度が分かりやすくなり、周知も容易になる見通しだ。

オープンイノベーション 課題・対応策を整理

また、18年度からはベンチャー企業支援にも一段と力を入れる。創業期ベンチャー企業には、破壊的イノベーションにより産業の新陳代謝を促し、大企業・中堅企業との連携によるオープンイノベーションのけん引役となることが期待される。

目に見えない革新的な技術やアイデアが財産となるため、権利化やライセンス供与などの方針を定める「知財戦略」が重要だ。しかし、創業前に知財戦略を構築しているベンチャー企業は約2割にとどまる。そこで特許庁は4月、ベンチャーエコシステムの活性化に向けて三つのコンテンツを作成、公表した。

国内10社、海外8社(イスラエル、ドイツ、シンガポール、中国)のベンチャー企業の事業方針や知財戦略、外部専門家との連携体制、知財の活用事例などを紹介したほか、大企業・中堅企業がベンチャー企業とオープンイノベーションを進める上で生じる課題と対応策を整理。

また、ベンチャー企業への出資や事業提携、M&A(合併・買収)を検討する際に実施する、知財観点からのデュー・デリジェンスの標準手順書(SOP)として、基本的なプロセスやポイントを紹介している。

中小・ベンチャー企業がイノベーションを創出し、世界に羽ばたくことで、日本の成長力は底上げされる。引いては地方創生にも貢献するだろう。産官学の連携に止まらず、地域金融機関を巻き込みながら、知財のすそ野拡大に向けた大きなうねりを起こしたい。

インタビュー/経済産業省 特許庁長官 宗像直子氏

創業期ベンチャーの知財取得支援

  • 宗像直子氏

―中小企業の特許出願件数が右肩上がりで増加しています。

「知的財産を経営戦略として捉える必要性に迫られているようだ。大企業のグローバル化の進展などサプライチェーンの構造が変化した結果、自社製品を開発して下請けからの脱却や海外展開を目指す中小企業が増えている。特許庁は2011年に知財総合支援窓口を全国都道府県に設置しており、こうした支援施策も一定の効果を上げている」

―19年度から中小企業の特許料を半減します。狙いや効果は。

「中小企業の知財活用は十分とはいえない。特許庁は従来、中小企業向け特許料金の軽減制度を設けているが、利用する中小企業の割合は3分の1程度にとどまる。従来の制度は対象範囲が赤字法人や研究開発型中小企業、設立10年未満または小規模企業などにとどまり、提出書類が多く、手続きが煩雑だった。全中小企業を対象に軽減措置を講じ、手続きを簡素化することで中小企業による知財の活用が一層活発になると見ている」

スーパー早期審査体制

―創業期ベンチャー(アーリーステージ)企業への知財取得支援に力を入れています。

「創業時、多くのベンチャーは資金調達や事業立ち上げに手いっぱいとなり、知財取得まで気が回らない。経営戦略に知財を組み込んでいるベンチャーは機械や電機・電子、IT系の分野でわずか2割程度。今後、設立10年未満のベンチャー10社程度に対してベンチャーキャピタル(VC)経験者などで構成する専門家チームを数カ月程度派遣する予定。18年度内にはベンチャーの特許出願について原則1カ月以内に1次審査結果を通知できる体制(スーパー早期審査)を整える」

―IoT(モノのインターネット)が急速に浸透し、オープンイノベーションが広がる中、知財政策はどのように変化しますか。

「中小・ベンチャー企業が、百戦錬磨の大企業知財部と渡り合うのは容易ではない。自社の技術情報の整理や秘密管理ができていない中小企業が連携相手に不用意にノウハウを開示し、搾取されてしまうケースはある。不適切な特許ライセンス契約を結び、妥当なロイヤルティーを得られない事例もある。特許庁は典型的課題と予防策をまとめた手引きを作成、公表するとともに、知財総合支援窓口でオープンイノベーションに関する相談を受け付ける」

―16年9月に特許庁が公表した地域知財活性化行動計画についての取り組み状況や今後の展開について教えてください。

「19年度までの成果目標(KPI)を定めている。知財総合支援窓口による相談件数は11年度の約5万5000件から8万7000件超(2月末時点)へと着実に増加した。よろず支援拠点など各支援機関との連携強化も奏功している。17年12月には全国9カ所にある各経済産業局などがそれぞれの都道府県と議論を重ね、地域の特色や強み、実情に基づく行動目標を定めた。成功事例を創出、発掘し、横展開していきたい。20年度以降については、地域の現場のニーズを踏まえて検討する」

【業界展望台】発明の日特集は、5/1まで全9回連載予定です。ご期待ください。

(2018/4/19 05:00)

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