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歯車産業を革新する ギアスカイビング加工

(2018/8/30 05:00)

業界展望台

モノづくりが進化するにつれ歯車への要求は高まり続け、さらなる軽量、高精度、高剛性の歯車をより効率良く生産することが求められている。特に人手不足が深刻化する昨今、その傾向はますます強まっている。これに対し次世代の歯車加工として期待を集めているのが、ギアスカイビング加工だ。理論的には100年以上前に生み出された加工法で、近年の技術の進歩により再び研究が活発化。2012年に日本国際工作機械見本市(JIMTOF)で脚光を浴びて以来、工作機械メーカー各社のギアスカイビング加工機が次々と市場に投入されている。

 

次世代の歯車加工 高効率生産に期待

ギアスカイビング加工の「Skive」は薄く剥ぐ、という意味を表す。加工対象物(ワーク)と工具を同期して高速で回転させながら、歯の溝をそぎとるようにして歯車を形成する加工法だ。加工速度、精度ともに優れるほか、歯すじ修正が容易な点や加工自由度が高い点など多くのメリットを持つ。特に内歯車加工では、上下運動で削る従来加工法のギアシェーパーに比べて、加工速度が大幅に上回る。

また複合加工機で加工できる点で、歯車の生産現場を大きく変える可能性を持つ。従来は複数の専用機が担ってきた歯車加工の工程を集約することで、生産効率アップやコスト削減が期待される。

いま市場には、歯車加工に特化した専用機から多数の工程を担う複合加工機まで、さまざまなギアスカイビング加工機が出そろいつつある。専用工具の研究も進み、長寿命化を目指して形状や材質、表面処理などに各社が独自の工夫を凝らした製品が開発されている。また小型機、大型機とモデル展開することで、幅広い分野の需要を取り込もうという流れが見られる。

今後、本格的な普及を果たすには、ユーザーを巻き込んだ検証、研究を積み重ねていく必要がある。これらをフィードバックした先に、次はどのような進化を遂げるのか。各社の開発力と創造力に期待がかかる。

有力企業各社のギアスカイビング加工機

【三菱重工工作機械】

ギアスカイビング加工専用機MSS300 専用工具を長寿命化

2016年、三菱重工工作機械は歯車加工に特化してきたメーカーとして、ギアスカイビング加工の専用機「MSS300」を発売した。長寿命化を追求して開発した専用工具と剛性を備えた機械が特徴で、工具と機械の双方に精通した同社の強みが発揮されている。自動車用トランスミッションのプラネタリギアや、産業ロボット用減速機の内歯車加工を想定。従来のギアシェーパーやブローチ加工に替わり、さらなる高速、高精度加工のニーズに応える。

  • 形状工夫により長寿命化した専用工具

開発にあたり課題としたのが、同社がギアスカイビング加工唯一の弱点と指摘する工具寿命の短さ。これを改善するために専用工具「スーパースカイビングカッタ」の、独自の形状を生み出した。

まず形状を工夫することで軸交差角を大きく取り、切削速度を上げて加工効率のアップを図った。さらに多刃、テーパ形状によって工具にかかる加工負荷を分散し、寿命を大幅に延長。従来の専用工具に比べ6倍の工具寿命が確認されたという。同社はこの技術により、17年度の日本機械学会賞(技術)を受賞した。

一方で、一度に作用する切れ刃の数が増えたことで機械への負荷も増加。この重切削加工へ対応するため振動減衰性、剛性に優れた幅の広いすべり案内面を採用したほか、工具軸とテーブル軸にダイレクトドライブモーターを取り入れることで高い回転同期精度を実現している。また専用工具にあわせて最適な加工条件をシミュレーションできるソフトを開発。歯すじ修正など各種補正もできる。ワークは直径300ミリメートルまで対応可能。

  • 今後は高硬度ワークへの対応にも取り組む

現在は欧州の大学と共同で、更なる工具寿命延長に向けた研究に取り組み、加えて高硬度ワークへの対応も課題としている。

発売から約2年経過したいまも、多くの顧客が同社のショールームでテストカットを実施しており、当初の予想を超えた幅広い分野に実績を広げつつある。

これについて同社担当者は「さらに普及させるにはさまざまな分野のお客様のワークを削り、地道に実績を重ねていくことが必要」と意気込みを見せる。今後は小型や大型モデルなどラインアップの充実を図ることで、より多くのニーズに応えていくのが目標だ。

【不二越】

ギアスカイビング複合加工機GMS200 1台で3役の工程集約

  • コンパクトな機体が魅力の小径歯車向けモデル

不二越は18年4月に、ギアスカイビング加工が可能な複合加工機「GMS200」を発売した。同機は1台で旋削、穴開け、歯切り加工の3役をこなし、大幅な省スペースに貢献する。

16年に発売した機種の小型モデルで小径歯車加工向け。直径220ミリメートルまでのワークに対応する。コンパクトな機体に複数の工程を集約し多品種加工に対応することから、減速機部品や自動車部品の歯車加工の需要を見込む。

さらにオプションでバリ取り、焼き入れ後のハードスカイビング加工も網羅できる。設置面積は7.5平方メートルで、ギアシェーパー、マシニングセンター(MC)、数値制御(NC)

旋盤を並べた面積の30%に削減した。加えて機械の高さを同社の従来機比40%減の、1680ミリメートルにまで抑えた。背を低くすることで工場内の見通しがよくなったことも大きなメリット。またロボットなどを利用した搬送の自動化を想定し、これに対応しやすいよう前面と天井部の扉を一体型にした。

小型ながら高剛性で、歯車精度はJISN6級以上を確保している。さらに従来加工に比べ加工時間を大幅に短縮した。ギアシェーパー加工に比べると、加工時間はおよそ5分の1に抑えられるという。操作性も優れ、対話型の操作画面によりクラウニング加工や工具補正、ギア諸元、ワーク座標などギアスカイビング加工条件のすべてが簡単に設定できる。

  • 専用工具は加工に適した表面処理と材質にこだわった

機械だけでなく専用工具の開発も手がけている。ギアスカイビング加工に適した材質や表面処理を選定して開発した「スカイビングカッタ」は、歯切り用と焼き入れ後の仕上げ加工用の2種類設けた。後者は超硬母材と独自のコーティングを採用。安定加工で高精度に仕上げられる。

さらにそれぞれ内歯車用、外歯車用で仕様を変え、計4種の専用工具を開発した。内歯車に比べ切削抵抗が大きく工具寿命が短くなるとの解析から、外歯車のギアスカイビング加工の工具長寿命化に積極的に取り組み、性能向上を図っている。

今後も同社が長年、培ってきた歯車加工解析技術を生かして工具仕様を設計し、内歯車と外歯車それぞれに最適な加工条件の提案を行っていく方針だ。

(2018/8/30 05:00)

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