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4月18日は「発明の日」 中国の知財最新事情

(2019/4/25 05:00)

業界展望台

森・濱田松本法律事務所 弁護士 小野寺良文

中国は「製造強国」を目指し「中国製造2025」を推進してきたが、米中貿易戦争で知財侵害や技術移転の強制を問題視され、知財制度改革を急ピッチで進めている。特許事件を専門裁判官が集中審理する体制を整えつつあるほか、懲罰的損害賠償などの権利保護を強化する法改正を進めている。中国は深刻な模倣品などの問題を残しながら、今や先端技術の有力特許を擁する特許大国になりつつあり、日本の製造業の国際特許戦略にも大きな影響を与えつつある。

中国における知財戦略の進展

2006年に「知的財産保護行動計画」、08年に「国家知的財産権戦略綱要」が定められて以来、中国は国家戦略としてプロパテント政策を推進している。イノベーションを推進し、知財保護を強化することにより、低コスト・低品質の世界の工場を脱し、産業の構造改革を進めて、成長を維持しようとするものだ。その結果、深セン、北京を中心にユニコーン企業など、国際競争力のある企業が次々生まれているが、その成長に知財が大きく寄与する好循環が生まれつつある。

特許出願および訴訟の増加

出願が奨励され、費用助成なども充実した結果、中国の特許出願数は急増し、11年に国内出願数が米国の年間約50万件を超えて世界一となり、16年には年間約140万件に達した。17年に国際(PCT)出願数でも中国は日本を抜き米国に次ぐ世界2位となり、18年には1位の米国(5万6142件)に肉薄する5万3345件を出願している(企業別1位は華為技術の5405件)。中国企業による人工知能(AI)関連の出願も急増中で、世界一といわれる。

知財関連民事訴訟も急増しており、18年に知財関連民事事件の新件受任件数は約28万3000件(前年比40.7%増)、このうち特許訴訟(実用新案・意匠を含む)は2万2000件(同34.7%増)に達した(日本ではそれぞれ年間500件、200件程度)。

直近5年で知財訴訟は約3倍、特許訴訟も約2.5倍に増加した。中国は米国、ドイツと並ぶ知財訴訟大国となっており、製品の製造地であることからも、国際特許紛争において重要性な紛争地になっている。

専門裁判所を設立

中国ではかねて知財専門裁判官が不足しており、判断の妥当性に問題があること、また地域保護主義に基づき偏った判断がなされる傾向があることなどが問題とされていた。

19年1月から、知財事件の審理の品質・効率の向上並びに各地における審理基準の統一を図るために、最高人民法院に知識産権法廷が設けられ、専門裁判官が全国における特許訴訟の第二審を集中的に審理する制度がスタートしている。

第一審レベルでは、すでに14年12月に北京、上海および広州に最初の専門裁判所である知識産権法院が、その後、15の主要都市の中級人民法院に知的財産法廷が設置され、特許訴訟を専属的に管轄しており、第一審、第二審を通じて専門裁判所が担当する体制が整いつつある。

懲罰的な損害賠償制度導入の見込み

第4次改正特許法の審議が、全人代で進んでおり、早ければ19年中にも成立、施行される予定である。改正法では、損害賠償額の増額(懲罰的損害賠償制度の導入、法定損害賠償の上限額の増額)、損害立証に係る文書提出命令制度の導入、ネットワークサービス提供者の連帯責任の明文化、オープンライセンス制度の導入など改正点は多岐にわたるが、いずれも特許権の保護を強化するもので、改正後、同国での特許権の行使がより活発になるものと予想される。

特に損害賠償額の算定について「特許権を故意に侵害し、情状が重いときは、上述の方法により確定される金額の1倍以上5倍以下の範囲で賠償額を確定することができる」との規定が追加され、米国に類似した懲罰的損害賠償制度が導入されることが注目される。

賠償金額の計算が困難である場合に裁判所が裁量で決定できる上限額も100万元(約1700万円)から500万元(約8500万円)に引き上げられる予定で、賠償額が大幅に増加する見込みである。

また、3月に成立した外商投資法で技術移転の強制が禁止され、関連する技術輸出入管理条例も改正された。

日本企業は戦略の見直しを

日本企業の中国での知財活動にも大きな変化が出ている。数年前までは、主要特許の出願は行いつつも、模倣品対策を中心とする企業が多かったが、近年、特許権を積極的に行使するケースや逆に提訴されるケースが急増しており、特許侵害対応のスペシャリストを派遣したり、若手社員を現地の大学や特許事務所に派遣して教育したりする企業も増えている。

多国籍企業間のクロスボーダー特許紛争を解決するための紛争地に、中国が選ばれるケースも増えている。将来、米国のようにパテントトロール(特許不実施主体、NPE)が暗躍することも懸念される。複数の米国の大手NPEや中国発のNPEが、競って権利を購入しつつあり、損害賠償額が増額する法改正が行われれば、権利行使が増加しそうだ。

これらの実務の変化は非常に速く、自社の特許戦略やリスクを常時見直していく必要がある。

森・濱田松本法律事務所 弁護士 小野寺良文

2000年弁護士登録。08年より森・濱田松本法律事務所パートナーを務め、14年より同事務所北京首席代表として北京に駐在。国内外の知的財産権業務に従事しており中国知財実務に詳しい。

【業界展望台】発明の日特集は、5/1まで全7回連載予定です。ご期待ください。

(2019/4/25 05:00)

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