大気中で光電子を高精度に計数する「AC-2S」シリーズ  低価格機種とプロ仕様機種で幅広展開【PR】

(2021/4/19 05:00)

 理研計器は、大気中で光電子を計数できるオープンカウンター式の計測装置「ACシリーズ」を発売して昨年35周年を迎えた。電子部品などのデバイスやさまざまな材料の特性を簡単に短時間で測定できる。このほど、業界ニーズに特化した廉価モデルとProモデル2種を「AC-2Sシリーズ」として発売。開発の経緯や特徴、今後の展開について営業技術部の中島嘉之さん、研究部の武藤弘樹さんと石崎温史さんに話を聞いた。

―ガス検知器のトップメーカーが、毛色の違うACシリーズを展開してきた狙いは。

中島

当社が手がける大気中光電子収量分光装置は、故・宇田応之博士が理化学研究所(以下、理研)時代に発明した。もともと当社は理研にルーツがあるが、発明の新聞記事を見た当時の社長が「一緒にやりましょう」と持ちかけたのがきっかけだと聞いている。開発当初、理研の研究内容をガス検知器に活用しようとした。しかし実用化には至らず分析機として製品化した。私自身も理研にいたことが縁で当社に入社した。以来、1985年に発売した初号機「AC-1」から長年にわたりACシリーズの研究開発をしてきた。現在は営業技術部で販売サポートを行っている。

左から武藤さん、中島さん、石崎さん

―大気中光電子収量分光装置は、どのような仕組みで何を分析するのですか。

武藤

物質が光を吸収した時に表面から電子が放出される「光電効果」を利用する。特定のエネルギーの紫外線を試料に当て、出てきた光電子を計数する仕組み。光子のエネルギーと出てくる電子数との関係から物質の特性を把握する。特に電子1個を取り出すのに必要な最小のエネルギーを「仕事関数」または「イオン化ポテンシャル」と呼ぶ。これらの特性を細かく把握することで、より高効率なデバイスや新材料などの開発に役立つ。

―他社製品との違いは何ですか。

石崎

電子は真空で計数するのが一般的だ。しかし、当社は大気中で測定できるオープンカウンター式を開発。大がかりな装置が不要で、これまで難しかった粉体や液体の測定が可能になった。操作性にもこだわり、誰でも簡単にスピーディーに作業できるのが特徴だ。こうした功績により、日本分析機器工業会(JAIMA)は、初号機のAC-1を「分析機器・科学機器遺産2015」に認定している。

―これまでACシリーズはどのような貢献をしてきましたか。

中島

いろいろな分野での活用例があるが、わかりやすいのは業務用プリンターの普及だ。転写で使う感光ドラムが人体に有害だったため、昔は「コピーはコピー屋さんでやるもの」だった。そこで、メーカー各社は無害な感光ドラムの開発を開始。シリコンや有機材料など膨大な素材で検討・試験を始めた。この時の選定指標がイオン化ポテンシャルだったため、試料を手軽に測定できるAC-1が活躍した。「AC-1を知らない研究者はいない」と言われるほど広まった。

―AC-1の後継機であり、新製品につながるAC-2は、どのように広がりましたか。

武藤

電流で発光する有機ELの開発だ。有機ELを使用したディスプレーは、画質に優れ、薄く、消費電力が少ない。この有機ELの低電圧化、高輝度化には材料の仕事関数測定が不可欠で、有機ELの発展と共にAC-2も世界に広がっていった。そして、AC-2は、真空蒸着装置と分光光度装置と並び、「有機EL三種の神器」と呼ばれるまでになった。この頃に当社のACシリーズは世界中に広まった。ACシリーズを利用した学術論文のうち、AC-2を利用したものが最も多い。

大気中光電子収量分光装置 Model:AC-2S

―後継シリーズとしてこのほど3種を発売しました。

中島

AC-2シリーズは世界中の大学や研究機関などに広がり、2000本以上の論文に掲載実績がある。この知名度を生かし、新製品は「AC-2Sシリーズ」と名付けた。これまでのACシリーズとの違いを示す「S」は“スマート”や日本を代表する花である“さくら”を意識した。高機能のまま小型化を実現した国産機が、世界中で活躍してほしいという願いを込めている。

―廉価モデルは何が変わりましたか。

武藤

AC-2シリーズはデスクトップ型がコンセプトだった。これを引き継ぎ、さらに小型化したのが「AC-2S」だ。設計を根本から見直し、必要最低限の機能に絞った。AC-2Sの横幅はAC-2に比べて約21%小さくなり、重量は約38%軽くなった。

中島

消費税込みの価格は1100万円とし、AC-2の6割以下の価格までコストダウンを実現した。これまで高額であるために導入を見送ってきた大学などの研究機関に提案していきたい。

―Pro仕様の2機種も発売しました。

石崎

材料開発向けに「AC-2S Proα」を開発した。照射紫外線の最低エネルギーは2eV(エレクトロンボルト)で、ACシリーズでは測定できなかった低エネルギー領域まで測定可能となった。また、照射紫外線の最大光量は従来の約5倍で高感度の測定が可能だ。その一方、電子部品などのデバイス開発向けに開発したのが「AC-2S Proβ」だ。こちらは紫外線照射スポット径を約10分の1にし、小さい試料に対応した。いずれもサンプルステージにヒーターを設置し、サンプルの温度を変えて測定できるようにした。使用環境が高温になりやすいデバイスや素材などの高効率化の検証に活用できる。

中島

Pro仕様の価格は1980万円で、旧AC-2と同程度だ。

専用のデモルームを設けた理研計器本社

―販売戦略を教えてください。

中島

ガス検知器メーカーである当社の売上比率でみれば、ACシリーズが占める割合は大きくない。ただ、当社のブランド力を高める製品になっている。ACシリーズの年間販売台数はここ数年、10台前後で推移。AC-2Sシリーズは、年間12台の販売を目指す。AC-2Sは国内外の教育・研究機関向けに、AC-2S ProαやAC-2S Proβはそれぞれ電池メーカーや材料メーカーなどに提案する。

 当社では35年前から無料デモ測定を本社(東京都板橋区)で行ってきた。若き日に当社に通い、優れた論文を書いた超一流の研究者が何名もいる。引き続き、科学技術への貢献と装置の普及に努める。

(2021/4/19 05:00)

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