[ ロボット ]

第7回ロボット大賞/経産大臣賞、MUJINのピッキングコントローラーが受賞

(2016/10/19 05:00)

経済産業省、日本機械工業連合会などは19日「第7回ロボット大賞」の受賞15件を表彰する。多数の応募の中から、社会が抱える課題解決への貢献や市場創出の期待度が高いロボットが選定された。大賞には経済産業大臣賞や総務大臣賞など六つが選ばれた。受賞ロボットは同日から東京・有明の東京ビッグサイトで開催する「Japan Robot Week 2016」で展示・紹介する。

第7回ロボット大賞(経済産業大臣賞)

【完全ティーチレスばら積みピッキングMUJINコントローラ

 「Pick Worker」(ピックワーカー)/MUJIN】

作業の度にロボットに動作を教え込む必要がなく、ばら積みピッキングなどの複雑な作業をできるようにするコントローラー。目にあたる3Dビジョンセンサーで位置を把握し、脳にあたるピックワーカーでそれぞれの箱の中から品物を取り出すためのロボットの動作手順を高速自動生成する。把握計画、干渉回避などのモーションプランニング技術や並列分散処理などの融合で、従来のコントローラーでは難しかった複雑な作業を実現した。

物流センターのピッキング作業は最も人手がかかる工程の一つ。数万種と言われる品物を取り出すためにその都度、動作を教え込むのは困難で、こうしたティーチレスのコントローラーが必要になる。

第7回ロボット大賞(総務大臣賞)

【Pepper/ソフトバンクロボティクス】

人とコミュニケーションできる人型ロボット。学習した内容は他のペッパーとクラウドを通じて共有し、それぞれのペッパーの経験知が集まって、ほかのペッパーにも共有されてコミュニケーション能力が進化していく。また専門家でなくても簡単に扱える画像操作環境(GUI)で、誰でもペッパーのアプリケーションソフトを開発できる。

コミュニケーションにとって重要な上半身の自然な動きのために、可動部をフルに使うなど人間工学に基づいた仕掛けを採用した。また、体のあちこちにセンサーを搭載し、安心安全な動きや移動をできるようにした。2015年10月に発売した法人向けでは16年9月までに1500社以上に導入された。

第7回ロボット大賞(文部科学大臣賞)

【モジュール分散協働型収穫支援ロボットシステム(自走式イチゴ収穫ロボット)

 /宇都宮大学(尾崎功一研究室)、アイ・イート】

イチゴ収穫を支援するロボット。最高級農産物として大粒完熟イチゴを海外に出荷するために、イチゴの実に全く触れない状態で消費者に届けることがポイントだったが、生産者にとっては負担の重い作業だった。

この問題を解決するために、ロボットを開発したが、それぞれの生産者で求められる作業支援の機能は異なった。そこで移動・観察・収穫の三つの機能モジュールにロボットの役割を分けて開発した。移動モジュールは小型化により一般的な栽培ハウス内での自律移動や人追随移動をし、イチゴ輸送容器も接続できる。観察モジュールは熟度を判定し収穫対象を特定する。収穫モジュールはイチゴと茎を認識し、実に触れずに収穫する。

第7回ロボット大賞(厚生労働大臣賞)

【HAL医療用下肢タイプ/CYBERDYNE】

ロボットによる脳・神経・筋系の機能の改善を行う。HALは、体を動かそうと思ったときに、脳や神経から皮膚表面にあふれ出す微弱な生体電位信号をセンサーで読み取り、装着者の動きをアシストする仕組み。2013年8月にロボット治療器として欧州の医療機器認証を受けた。日本では緩徐進行性神経筋難病疾患(脊髄性筋萎縮症など)の治療のための医療機器として治験が行われ、15年11月に医療機器として薬事承認、16年4月に医療保険適用となった。16年10月現在で約100台が日欧で治療に使われておりドイツで公的医療保険、米国で医療機器承認の手続き中であるほか、脳卒中など保険適用される病名を拡大すべく治験を実施中である。

第7回ロボット大賞(農林水産大臣賞)

【ロボットトラクタの研究開発/ヤンマー】

農作業用ロボットトラクターの研究開発が評価された。現在はロボットトラクターと有人トラクターの2台を1人で動かす随伴型ロボットトラクターが研究開発から実証試験の段階に入っている。農業人口減少のなかで、2台を1人で操作することにより、省力化を進める。トラクターを横列に並べて操作することで1人で2倍の幅の作業ができる。このほか、縦列に2台並べて操作すると前のトラクターが砕土、後ろが施肥や種まきといった複数の工程を1人で一度に作業できるなどのメリットがある。

2018年度の実用化に向けた商品開発を行っている。将来は完全無人化や遠隔監視による無人化、複数台無人運転も視野に研究を進めている。

第7回ロボット大賞(国土交通大臣賞)

【SPIDER(スパイダー)を用いた高精度地形解析による災害調査技術/ルーチェサーチ】

従来の写真測量では難しかった、樹木で隠された地形データを迅速かつ高密度・高精度に測量する技術を開発した。自律航行可能なドローンに3次元レーザスキャナーと、衛星を使った高性能のGNSS/IMUを搭載して、樹木の下の地形データを3次元測量する。

大規模地震や風水害が引き起こす土砂災害現場の調査をはじめ、山林や急傾斜地の測量、森林管理など適用範囲は広い。2016年4月の熊本地震ではレーザー計測した現地のデータをその場で3次元解析し安全確認を行った上で捜索活動を再開した。今後は、IoT(モノのインターネット)との融合を図るほか、上空から水中地形を計測できる技術の開発にも挑戦する。

最優秀中小・ベンチャー企業賞(中小企業庁長官賞)

【リトルキーパス/ロボットアシストウォーカーRT.1/幸和製作所、RT.ワークス】

  • リトルキーパス

  • ロボットアシストウォーカーRT.1

高齢者用の歩行補助車に自動制御機能を付けた。上り坂では平地より押す力が必要になる一方で、下り坂では行きすぎないようにブレーキなどで速度を調整する必要があった。また、つまずきなどで急に車体を押す力が加わった時に、体を支えることができなくなるといった場合があったが、ロボットテクノロジーの活用によって、これらの課題を解決した。GPS位置情報によって、利用する高齢者がどこにいるかを家族が確認できる。

日本機械工業連合会会長賞

【人―ロボット協調安全用スリーポジションイネーブル装置/IDEC】

ロボット操作の安全装置であるスリーポジションイネーブル装置の開発・製品化と、日本主導で同装置の国際規格づくりを成功させた。ロボットの緊急停止装置を人間工学に基づいて開発。スイッチを押すと動き、離すと停止するだけでなく、さらに強く押すと停止する3段階の機構を開発した。スイッチを離すと停止すると説明しても、危険になると逆に押し続ける人がいることに着目した。製品化から約20年間で250万台を世界に出荷した。

【協働ロボットFUNUCRobotCR―35iA/ファナック】

安全柵を必要とせず、人と一緒に作業できるロボット。重量部品をロボットが支え、人が組み付け作業などを行えるため、自動化の難しい作業の負担を軽減できる。国際規格に適合する高い安全性を備え、第三者機関から安全認証を取得した。

ロボットのどの部分に人が接触しても安全に停止。ロボット表面は緑色の柔らかいカバーで覆われている。ロボットアームを人が直接押して動かすこともできるため、万が一の危険も回避できる。

審査員特別賞

【介護老人福祉施設の変革(生産性革命)実現のためのロボット利活用の推進

 /シルヴァーウィング】

2013年度からロボット介護機器を介護施設に導入し、利用者の安全確保や機能訓練の向上のほか、介護者の負荷軽減を行ってきた。人手による介護を基本としながらも人とロボットの最適な組み合わせを考え、利用者の生活の質の向上、健康維持を図る。リハビリロボットを活用し、それぞれの利用者にあったリハビリ訓練を実施。また重い作業をサポートするスーツなどを活用し、負担の少ない新しい介護のあり方を検討している。

【レスキューロボットコンテスト/レスキューロボットコンテスト実行委員会】

災害救助を題材としたロボットコンテストで、1995年の阪神・淡路大震災を契機に、2001年の第1回から毎年開催。競技は、地震で被災したという設定の6分の1の市街地模型のなかで行う。この中に要救助者「レスキューダミー(愛称・ダミヤン)」が配置されており、速くかつやさしく救出しなければならない。参加チームは高校生から大学生、社会人とさまざま。災害対応に関する社会啓発によって、科学技術の裾野を広げる。

優秀賞

【まほろ(バイオ産業用汎用ヒト型ロボット:ラボドロイド)

 /ロボティック・バイオロジー・インスティテュート、産業技術総合研究所】

バイオ産業用の双腕ロボットで、熟練作業者のスキルを再現しながら、ピペットや遠心分離機などの実験機器を操作する。

実験の再現性が高まり、これまで何回も繰り返し検証していた実験回数を最小に抑えることができる。

創薬などの研究には膨大なコストと時間がかかることが問題となっている。研究者や実験者は煩雑な実験作業から解放され、本来のクリエイティブな作業に専念できるようになる。

【セコムドローン/セコム】

自律飛行し、侵入者を監視するドローンで、オンライン・セキュリティシステムや防犯用レーザーと組み合わせて、最適な位置から侵入者を撮影する防犯サービス。広い敷地の監視には、数多くのカメラが必要だった。センサーなどの情報をもとに、無人で離陸を開始し、飛行エリアマップに定められた空間を飛行する。侵入者に接近・追尾し、撮影を行う。夜間でも白色LED照明を使うことでカラー撮影もできる。異常発生時は速やかに安全な着陸を行う。

【土壌センサー搭載型可変施肥田植機/井関農機、鳥取大学(森本英嗣研究室)】

超音波センサーで土壌によってバラツキのある肥沃(ひよく)度を測定し、最適な施肥の量を自動で調整する田植え機。無駄なく肥料を使うことができ、稲の生育ムラもなくなることから、稲の倒伏や品質の低下を防ぐことができる。

またGPSを搭載しており、施肥結果をタブレット端末の地図上にデータとして残すことができる。このことにより、後年の栽培管理に利用し、経験と勘だけに頼る農業からの脱却に役立つ。

【農業用アシストスーツ/和歌山大学、パワーアシストインターナショナル】

ミカンの収穫や玄米の入った大きな袋の積み上げ作業といった力仕事などをサポートする。アシストスーツを使うことで、例えば20キログラムを持ち上げるのに10キログラム分の力で済むようになる。2―3時間の連続使用ができるバッテリーを含めて全体で7キログラムと軽量で、1人でもスーツの着脱をしやすい。

2015年度には全国13県で100台の現地実証試験を行った。アシスト力発生時の装着者への衝撃を緩和するなど工夫した。

(2016/10/19 05:00)

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