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(2016/11/10 05:00)
統計学の専門家であるネイト・シルバー氏率いる統計分析サイト「ファイブサーティーエイト(538)」では、ビッグデータ(大量データ)を駆使した分析で、クリントン氏が勝利する確率を投開票直前に71・4%と出していた。前回の米大統領選など、選挙結果予測の的中率が高かったが、もてはやされている最新技術の限界を示した格好だ。
ビッグデータや人工知能(AI)など技術は進化しているのに、なぜ予測は外れるのか。よく例えに使われるのが金融商品の運用だ。ノーベル経済学賞受賞者を抱えた米ヘッジファンド「LTCM」は金融工学を駆使しながら、1998年のロシア危機を予測できず破綻に追い込まれた。
人工知能学会会長の山田誠二国立情報学研究所教授は「データのない未来は予測できず、データにならないサイレントマジョリティーは解析できない」と説明する。
AIが進化した現在、チャートの上下から動きを予測するテクニカル分析は統計解析で当たるが、財務諸表や経済指標から株価を予測するファンダメンタルズ(基礎的条件)分析は難しい。
AIやビッグデータではデータが多いほど予測精度が上がる。ただアンケートに答えない人たちの意見や、心変わりはデータにならない。世論や空気などを受けた人間の判断は予測が難しい。「AIは万能と思われがちだが接戦になれば、ほとんどわからない。今回の大統領選はビッグデータからの予測が難しい典型例」という。
現実にはビッグデータと統計で対応できる現象もあるが限界もある。「論理や推論で人間がAIを補うハイブリッド型が理想。人間が簡単に補助できるなら人に任せた方がいい」と指摘する。
(2016/11/10 05:00)