[ 政治・経済 ]

【電子版】「米国第一」にノー、つまずくトランプ外交-メキシコとの首脳会談中止

(2017/1/27 18:00)

  • 米大統領選候補当時のトランプ氏(右)と共同記者会見に臨むメキシコのペニャニエト大統領=2016年8月、メキシコ市(AFP=時事)

トランプ米大統領が不法移民対策として「メキシコ国境の壁」建設の大統領令に署名したことへの反発から、31日の米メキシコ首脳会談が中止になった。自身が掲げる「米国第一」の流儀に「ノー」を突き付けられた格好で、トランプ外交は出だしで大きくつまずいた。米民主党幹部は「メキシコとの関係を壊し、米国の安全を損ねている」と批判した。

ツイッターの応酬

トランプ大統領とメキシコのペニャニエト大統領の応酬は、ツイッター上で展開された。ペニャニエト氏は25日、トランプ氏が壁建設の大統領令に署名すると、ビデオメッセージを投稿。「米国の決断を非難する。メキシコは壁の費用は払わない」と明言した。

トランプ氏は翌26日朝、「壁の建設費を払いたくないなら、会談を中止した方がよい」とけん制。ペニャニエト氏は3時間後、「首脳会談に出席しない」とツイートした。首脳同士が衆人環視の下で対立するのは極めて異例だ。

決然と対抗

ペニャニエト大統領が決然と対抗する背景には、「反トランプ感情」が渦巻く国民の突き上げがある。メキシコからの不法移民を「婦女暴行犯」と呼び、壁の建設費用を一方的に要求する態度に野党も猛反発。首脳会談で成果がなければ「土下座外交」と非難を浴びる恐れがあった。

スパイサー米大統領報道官は26日、記者団に対し、今回の事態について「国民を守るのは最優先課題だ」と主張。これに対し、ペニャニエト氏もメキシコの大統領として、対米関係の重要性を考慮しつつ、自国の主権と尊厳を守ることを選択したと言える。

ただ、トランプ政権は北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し、輸入品への課税強化策など次々と難題を押し付けてくる。「対立と服従ではなく、対話と交渉を」と訴えるペニャニエト氏にとって、米国との関係再構築は重い課題だ。

米企業に打撃も

米メキシコ関係の悪化は、北米3カ国の貿易関係の先行きにも不安の影を落とす。米国のメキシコに対する貿易赤字は約580億ドル(約6兆6000億円)。トランプ氏は米国の利益となる「ディール(取引)」を旗印に赤字削減を通商政策の軸に据え、メキシコへの課税強化を探る。

メキシコのグアハルド経済相は「不利な立場に追い込まれるなら、NAFTA離脱も辞さない」と警告。米側もメキシコなどが譲歩しなければ、環太平洋連携協定(TPP)と同じくNAFTAを離脱すると脅し、双方の摩擦は激しさを増している。

トランプ氏が保護主義政策を貫けば、メキシコから部品を調達する米自動車メーカーなどが大きな打撃を受けると予想されている。米国に進出した日本の自動車メーカーも同様だ。日本企業関係者は「米国に投資するリスクが高くなっている」と懸念を隠していない。(ワシントン、サンパウロ時事)

(2017/1/27 18:00)

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