2022年 第65回十大新製品賞

(2023/1/4 05:00)

増田賞

東海旅客鉃道・プロテリアル(旧日立金属)/光ファイバー式警報トロリ線システム

光ファイバー用いトロリ線摩耗検知

東海道新幹線で車両に電力を供給するトロリ線が摩耗していないかを検知するため、初めて光ファイバー検知線入りのトロリ線を導入している。24時間365日監視を続け、地震や台風などのトラブル時にも迅速に知らせる。トロリ線は常に摩耗しており、仮に断線した場合、列車の運行ができなくなるだけでなく、設備の復旧に多大な時間を要するため、摩耗検知は重要な技術だ。

従来はメタル線を埋め込んでいたが、検知は運転終了後の深夜に限られていた。2021年から約10年かけて順次導入する計画で、導入費は約88億円。最初の検討から開発、架線工事まで約20年に及ぶ一大プロジェクトといえる。

光ファイバーはセンシングに使う。トロリ線内部の摩耗限界とされる位置に直径1・1ミリメートルの光ファイバー2本を前もって入れ、摩耗があれば光ファイバーが断線する。断線箇所では光がはね返されて位置が特定できる仕組み。

今回はメンテナンスの容易さや工数削減なども実現した。

本賞

安川電機/超高効率薄型同期電動機「エコPMモータ フラットタイプ」

モーター小型化 全長・体積7割減

世界最高レベルの高効率を実現した超薄型・高効率の永久磁石同期(PM)モーター。創業以来100年以上にわたり培ってきたモーターとパワー変換技術を活用して、省エネルギーやカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の取り組みに対応する。

コア形状の最適化や高密度巻線などで鉄・銅損を低減した。また、シリーズ全機種で国際電気標準会議(IEC)が定める、産業用モーターの国際高効率規格の最高レベル「IE5」以上を達成している。

さらに、冷却構造を最適化する熱設計などで冷却ファンを不要に。従来品比でモーター全長が最大70%、体積は50―75%減少、静音性も向上した。

本賞

ファナック/FANUC Robot M-1000iA

取り出し位置0.1mm単位設定

1000キログラムの重量物を搬送できる力強さと、カメラを用いて0・1ミリメートル単位で重量物を正確に取り出し位置決めする繊細さを兼ね備えた大型ロボット。小型・中型ロボットで利用するアームの可動域が広い「シリアルリンク機構」を同社の重可搬ロボットに初めて採用。コンパクトかつ広い動作範囲によって生産が本格化し始めた電気自動車(EV)のバッテリーユニットの搬送作業などに利用できる。シャープで力強い統一感のある外観も特徴で、ユーザーがロボットを導入したくなる魅力的なデザインに仕上げた。剛性を確保しながらもアームを軽量化、複数の消費電力削減機能も備え、従来比20%以上の省エネルギー化に成功した。

本賞

ダイヘン/撮って選ぶだけでロボ教示 タブレットによる教示レスシステム

教示作業不要で溶接ロボを操作

市販のタブレット端末を使い、簡易な操作で溶接ロボットのプログラムを自動生成できるシステム。加工対象物(ワーク)をタブレットで撮影し、画面上で溶接したい箇所を選択すればティーチレス(教示作業不要)でロボットを動かせる。

専用アプリケーションを入れたタブレットで拡張現実(AR)マーカーとワークを同時撮影すると、画面上に溶接箇所の候補ポイントを自動表示する。そこから溶接開始点や終了点などを選択し、プログラムが生成される。同社の実験で通常のティーチペンダントの教示と比べ、プログラム作成時間を約60%削減できた。

中小製造業のロボット導入を容易にし、生産現場で頻繁に生じるプログラム作成負担も減少できる。

本賞

川崎重工業/混載対応デバンニングロボット Vambo

段ボールの搬出・AIロボ自動化

物流現場で最も過酷と言われる段ボールケースの荷降ろし(デバンニング)を自動化するロボット。自社の中型汎用ロボットに無人搬送車(AGV)を組み合わせた。コンテナ内に自動で進入・自走し、最大30キログラムまで荷降ろしできる。

コンテナには1台当たり1000個以上のケースが積まれ、従来は人手で搬出していた。自社開発の3次元(3D)の人工知能(AI)ビジョンシステムにより、側面からケースサイズや位置ずれ、傾きを自動認識する。同システムとケース取り出しハンドにより、毎時最大600個を荷降ろしできる。

既存の物流施設でも運用でき、使用しない時は保管場所へ簡単に撤去し、人の動線を保ちつつ活用できる。

本賞

島津製作所/水中光無線通信装置 MC500

緑・青レーザーで洋上船間と通信

対となる端末間で緑色と青色のレーザー光を送受信することによって、水中での高速通信を可能にするモデム。最大通信視野角40度と最大通信距離80メートルを実現し、自律型無人潜水機(AUV)や水中ドローンといった水中ロボットに搭載して、ロボット間やロボットと洋上船間などで通信できる。

指向性と応答速度に優れた半導体レーザーを通信用光源として採用した。通信速度は最大で毎秒20メガビット(メガは100万)で、大容量データの送受信や動画のリアルタイム通信が可能。用途・環境に応じて通信速度を切り替えられる。洋上風力発電設備の設置・点検、海底パイプラインの検査、鉱物資源の探査といった海洋業務の効率化に貢献する。

本賞

ソディック/リニアーモータ駆動 高速・高性能ワイヤ放電加工機 AL600G「i Groove + Edition」

緩やかに回転・未消耗面で加工

同社独自の「ワイヤ回転機構(iGroove)」を搭載した。ワイヤを緩やかに回転させて送ることで、未消耗のワイヤ面で仕上げ加工が可能。これにより加工寸法が安定し、均一で高品質な加工面が得られる。ワイヤ電極の全周を有効活用するため、仕上げ加工領域におけるワイヤ消費量を従来比最大30%削減できる。また新開発の放電加工制御技術を採用。放電電圧の挙動や変化を放電パルスごとに細かく検出し、放電加工制御とリニアモーター駆動の各軸サーボ制御へ適用することで、加工時間の同20%短縮とともに加工精度向上を両立した。加工液処理系の最適制御により、消費電力量も同20%削減するなど、脱炭素社会に向けた機種と位置付けられる。

本賞

SMC/エアマネージメントシステム AMS20/30/40/60シリーズ

エアー消費流量・閾値で自動低下

工場の消費電力や二酸化炭素(CO2)排出量削減に寄与するシステム。設備のエアー消費流量が事前に設定した閾値(しきいち)を下回ると、待機状態であると認識、設備に供給する圧力を必要最小限まで自動的に低下させることで消費エアーを削減できる。

流量以外にも圧力や温度をモニターする機能を搭載、本製品を設置することでセンサーデータを容易に収集することが可能。無駄なエアー消費の箇所や時間帯を特定して効率的なエアー消費削減活動につなげられるなど、生産ラインのデジタライゼーションにも貢献できる。ゲームチェンジャーになり得る画期的な製品として注目される。

通信距離は最大100メートルと、設置の自由度も大きい。

本賞

日立製作所・日立パワーソリューションズ/電子デバイスの非破壊検査を可能とする超音波映像装置「FineSAT7」

反射・透過音波で検査時間5割減

多層構造を持つ半導体ウエハーや電子部品の内部にある微細な構造や欠陥を検出できる超音波映像装置。300ミリメートル(12インチ)ウエハーの検査を1回で終えられる。アナログ信号をデジタル変換する基板の高性能化や、信号波形の特徴点を高精度に抽出するプログラムにより、欠陥検出画像を高画質化した。微細化や多層化が進む半導体デバイスなどの検査の高精度化、高効率化のニーズに応える。

半導体ウエハーや電子部品内部の界面にある欠陥を反射音波と透過音波の両方で検出する。ウエハーを半分ずつ検査する従来方法と比べて検査時間を約5割短縮できる。装置内の部品や機器の配置を見直して装置の外形寸法は従来の大きさを維持した。

本賞

三菱電機/ワイヤ・レーザ金属3Dプリンタ AZ600

ワイヤ方式活用・高精度3D造形

材料に金属ワイヤを使い、レーザーを熱源として溶融・積層することで3次元(3D)構造を高品質に造形できる。ワイヤ方式は材料の安定性に優れ、コストも安いことなどから、一般的な粉末材料方式の課題解決に有効とされる一方、プロセス制御が複雑なために高精度な3D造形は難しいとされる。本製品はレーザー照射の同時5軸制御とレーザー出力、ワイヤ供給量を造形状態に応じて協調制御する独自のデジタル造形技術を開発し採用。安定的で高品質な3D造形をワイヤ方式で実現した。ニアネットシェイプをはじめ金型補修や開先溶接の自動化、必要な部分にのみ耐熱性などの機能を付加する異種金属部分造形など多用途が見込める。

本賞

オークマ/ものづくりDXを実現する 新世代CNC OSP-P500

仮想機械を再現・加工時間正確に

加工時間の見積もりを実加工時間の1000分の1、誤差1%以下の高速・高精度で可能にするなど、デジタルツインの機能を搭載した。装置内のデジタル空間に最新の実機データと3次元(3D)モデルによる仮想機械を再現。正確な加工時間見積もりで加工スケジュールの策定や迅速で正確な納期、コスト見積もりに寄与する。

加工動作作成から段取り、加工、検査まで、一連の作業を図面情報の入力をするだけで加工準備ができ、加工用のプログラム言語を知らない初心者でも簡単に扱える。二酸化炭素(CO2)排出量の「見える化」や、周辺機器の間欠運転の強化、周辺機器のアイドルストップなどの脱炭素関連のソリューションも標準搭載した。

日本力賞

オルガノ/超純水装置ピューリックμシリーズ

超純水少量に対応

ラボラトリー向けの超純水装置。分析や研究に超純水を必要とするが、少量で済むため装置の購入に踏み切れなかった研究機関や教育機関、病院、企業の研究開発部門向けに開発した。

水道水直結型。操作パネルが簡素で直感的な操作ができる。軽い力でホルダーを引き出してカートリッジを交換できるなど画期的なメンテナンス機構を採用しており、工具がなくても保守ができる。また、機能をシンプルに抑え、自社製カートリッジの開発でランニング費用も低減した。IoT(モノのインターネット)による遠隔監視が可能。幅290ミリ×奥行き428ミリ×高さ598ミリメートル。重さは24キログラムと設置しやすい。白を基調とした清潔感のあるデザインは、研究室に調和する。

モノづくり賞

不二越/超コンパクト制御装置「CFDq」

縦・重ね置き可能

世界最小クラスを実現した小型ロボット制御装置。制御装置の小型化ニーズに応えるため基盤の配置など設計を見直した。既存製品「CFD」との比較で容積を81%減の6・0リットル、重量を同71%減の5キログラム、設置面積を同60%減の729平方センチメートルと圧倒的な軽量・小型化を実現した。また縦置きや重ね置きが可能で、生産ラインの省スペース化やレイアウト自由度を高められる点も特徴。周辺装置を含む設備全体のコンパクト化によってトータルコストダウンに貢献できる。小型化だけでなく手元でのモード切り替えを可能にするなど、操作性も向上。不二越が2022年3月に発売した新産業用ロボット「MZ Fシリーズ」の3機種に対応する。

不二越/高速・高精度ロボット「MZ Fシリーズ」

速度・精度に磨き

軽量化と高剛性を両立した設計により、クラストップレベルの高速・高精度を実現したロボット。高速・小型・軽量が特徴の従来機種「MZシリーズ」に比べさらに速度・精度を向上した。

生産性向上や効率化ニーズが強い電機・電子分野などモノづくり現場の高度化に貢献する。とりわけ「MZ07F」では内部構造を最適化し、加速・減速性能を大幅に強化。タクトタイムを従来品比約43%短縮することに成功した。

不二越のロボットの特徴である中空構造を採用し配線・配管の引き回しを不要にしたほか、周辺機器との干渉リスクを低減させるなど利便性を高めた。

3機種をラインアップしており、生産現場の多種多様なニーズに応えられる。

(2023/1/4 05:00)

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