航空機リース世界2位に 関連投資ビジネス強化【PR】

(2023/3/30 00:00)

 三井住友ファイナンス&リース(SMFL)は、傘下の航空機リース会社SMBCアビエーションキャピタル(SMBCAC)を通じて、アイルランドの航空機リース会社ゴスホーク社を買収した。これにより保有・管理・発注済機材を合わせて約1000機規模の運営体制となり、航空機リース業界でエアキャップ社に次ぐ世界2位に躍り出た。コロナ禍で減少していた航空機需要が回復する中、航空機リースを活用した投資ビジネス強化への戦略を探る。

  • 執行役員 トランスポーテーション事業部長 畝岡 淳氏(左)、航空船舶営業部長 高見 順一郎氏(右)

安定資産を運用

 三井住友フィナンシャルグループと住友商事の戦略的共同事業会社であるSMFLは、2012年に英大手銀行のロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)から傘下の航空機リース事業をSMBC、住友商事と共同で買収。SMBCACとして子会社化したことで航空機リース事業に本格参入した。

 航空機は最新鋭のナローボディー機(単通路機)で1機5000万米ドル(約70億円)程度と高額でありながら経済耐用年数は約25年と長い。国際的に取引可能で、取引は米ドルで行われる米ドル資産。100席以上の航空機は米ボーイングと仏エアバスの2社が寡占しており、厳格な整備が実施されていること、中古機市場も活発であることから、価値も比較的安定しているという特徴を持つ。この安定資産である航空機を整備状況などを管理の上、世界の航空会社にリースし、延長利用や別の航空会社へのリースなどを経て、最終的に売却するのが航空機リース事業だ。

航空機投資ビジネスを強化

  • 執行役員 トランスポーテーション事業部長 畝岡 淳氏

 SMFLの畝岡淳執行役員トランスポーテーション事業部長は「航空機の機材数が約1000機規模になったことで、より一層投資家のニーズに対応した機材を提供できる体制になった」と語る。

 SMFLが提供する「購入選択権付き航空機オペレーティングリース」(JOLCO)は、航空機の購入価格約70億円のうち20億―30億円分を出資金として投資家に販売し資金調達。残額は金融機関から借り入れて、航空機を購入し、航空会社にリースする。

 最低出資金額は5000万円。SMFLの高見順一郎航空船舶営業部長は「地域を代表するオーナー企業を中心に一定のリピート需要がある。東京、大阪、名古屋の営業拠点に加え、九州にも拠点を新設した」と話す。年間のJOLCO市場規模数千億円のうちSMFLがトップクラスの出資額を集めているという。

 事業投資の機会を提供する「航空機オペレーティングリース」では、SMBCACが保有するリース債権付き航空機を1機売りのかたちで代理販売も行っている。

 SMFLは航空機投資ビジネスを強化し、保有機材を投資家に売却することで資産効率を追求する。

コロナ禍からの需要回復

  • 航空船舶営業部長 高見 順一郎氏

 航空機リース業界は格安航空会社(LCC)の台頭を背景に市場規模を拡大してきた。効率的な運用でコストを大幅に削減するLCCがリースで航空機を調達する事例が増えたほか、既存の航空会社も旅客需要増加からリース機の導入を増やしているからだ。SMBCACによると、航空機のリース比率は、00年は25%だったが、22年には50%以上に高まった。

 だが、20年に本格化したコロナ禍が航空機需要の急減を招いた。20年4月の世界の国際線・国内線の旅客需要は前年同月比90%減少、多くの航空会社が経営危機に陥った。「クレジットを重視することは当然として、優良資産である機材を適正に管理し、投資回収が可能な航空会社を選択することが一丁目一番地だ」(畝岡執行役員)。

 ただ、22年11月の旅客需要は米大陸で19年同月比9割以上、欧州でも8割以上まで回復した。航空会社も経営効率化に向け旧型機の退役を進めたことで、「ほぼフル稼働に戻っている」と畝岡執行役員は分析する。

 加えて、現在はボーイング、エアバスともにモデルチェンジの端境期にある。ボーイングのナローボディー機では「B737―800」から「B737MAX8」、エアバスでは「A320ceo」から「A320neo」に変わりつつある。

 世界に約3万機ある旅客航空機の約7割がナローボディー機とされる。このうちB737―800が約5000機を占めているが、28年にかけ新型機に置き換わる見通し。「ナローボディー機の市場規模はますます拡大していくと考える」(畝岡執行役員)。買収したゴスホーク社も、保有・管理・発注済機材約200機の約8割がナローボディー機であり、SMBCACと同様にナローボディー機を中心としたポートフォリオを持つことから、「この点でさらに強みを発揮できると考えている」(同)と語る。

  • ボーイング社製 B737 MAX 8

SDGs実現にも寄与

  • CFMインターナショナル社製LEAP-1Aエンジン

 SMFLは、傘下のSMBCエアロエンジンリース社において、同社が保有するリース債権付き航空機エンジンを代理販売している。航空会社がエンジンの整備期間中に使用する燃費効率の高い次世代型スペアエンジンをリース対象とする仕組み。20年からはアイルランドのヘリコプターリース会社と合弁でヘリコプターのリース事業も始めた。中型機を中心とするヘリコプターは救急ニーズを満たすための医療搬送、世界的な気候変動を受け発生頻度が増す自然災害時の探索救難、再生可能エネルギーの利活用推進に伴う洋上風力発電設備の稼働維持・保全を目的とする人員輸送等で使用され、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも寄与する。

 航空機リース事業では、新型機の置き換えにより旧型機に比べ燃費を2割程度向上させることが可能で、SDGs実現に向けた取り組みとなる。さらに、50年までに自社事業でCO₂排出量ネットゼロを達成することを目標に掲げるSMBCACは、22年9月、航空会社に対し、航空機オペレーティングリースにカーボン・クレジットの販売を併せたソリューションの提供を始めた。持続可能な航空燃料(SAF)の普及を促進するための投資も視野に、航空業界の脱炭素化への取り組みを支援する。

(2023/3/30 00:00)

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