第49回発明大賞、受賞製品・技術のポイント 発明功労賞

(2024/3/8 05:00)

発明功労賞(50音順)

ケーブル落し込み装置=育良精機(常務取締役開発事業部長兼研究所所長・大槻芳朗氏)

 小型で軽量なケーブル延線工事用機器。ビルなどで屋上からケーブルを把持して下に下ろす作業に使う製品で、従来より現場での設置が容易となった。従来は大型でブレーキをかけながらケーブルを下ろしており、摩擦などで負荷がかかり、劣化の原因になっていた。コントローラー一つで複数のモーターを同期でき、建物の階層によらずケーブルの質量や距離に応じて装置機器を増やせば一定の速度で安全に作業できる。延線用の特殊機器であることから市場占有率は高く、国内の工具・電材商社に販売している。(育良精機=茨城県つくば市)

発明功労賞

昇降装置及び倉庫装置=伊東電機(会長・伊東一夫氏ほか2人)

 垂直方向に動作する棚部材を複数持ち、各棚部材に載せられた荷物を同時に搬送できる。二つの棚がシーソー動作で昇降を繰り返し、効率良く垂直方向に荷物を高速仕分けする装置である。処理能力は1時間当たり2500ケース。他方式の様に棚部材が昇降した後に戻ってくるまでの往復動作が不要。垂直方向だけでなく、昇降装置内での水平方向の移動ができるため、高効率搬送を可能にする。

駆動源は独自のDC24ボルトブラシレスモータ搭載のパワーモーラ。エアー機器を使用せず安全かつ省エネで、導入時の初期費用を削減する。(伊東電機=兵庫県加西市)

発明功労賞

溶解型マイクロニードル=コスメディ製薬(社長・権英淑氏ほか1人)

 痛みを伴わずに皮膚の内部に刺し薬剤を注入できる。生体成分のヒアルロン酸やコラーゲンを素材に、硬さと粘り強さを両立し折れにくいマイクロニードルを作製。皮膚の角質層に刺し止めることに成功した。複数の微小な針が数百本並んだパッチを皮膚に貼るだけで、長さ200マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の針が角質層に挿入され、肌の水分で針が溶け成分が浸透する仕組み。

在宅で“貼る注射”を実現し、しわの予防や美白などが期待される化粧品の開発につながる。ワクチンなど医薬品への応用も進める。(コスメディ製薬=京都市南区)

発明功労賞

生産ラインの効率化に資する移送機構=コネクテッドロボティクス(執行役員・塚本光一氏ほか3人)

 食品を容器に盛り付けるロボットが入った生産ラインを効率化できる。コンベヤーで運ばれる容器をロボットの近くに運び、ロボットが把持する物を容器内に解放してから容器をコンベヤー上に戻すという往復移動を担う。今まで複数必要だった容器供給装置が一つで済み、コンベヤーの台数を削減できるため、設置面積を減らせる。

対象物をロボットに近づけ処理するため、総菜の盛り付けや調理など高い処理精度が必要な作業をロボットで行える。アームが短いロボットでも生産ラインに活用できる。(コネクテッドロボティクス=東京都小金井市)

発明功労賞

情報処理装置、情報処理システム及びプログラム=コバヤシ精密工業(社長・小林昌純氏)

 設備ごとの電力消費量を計測する装置。各ブレーカーにセンサーを取り付け、消費電流を測定してクラウドにデータを送信することでリアルタイムに電力量や電気料金、二酸化炭素(CO2)排出量を調べられる。装置ごとの待機電力や空調などの電力ロスが見つかり削減につながった。自動車や物流、食品会社などが主な販売先であり、今後はより販売を拡大していく予定。

電力料金の高騰で稼働する装置の状況把握が重要となる中、電気を大量に消費している装置をリアルタイムで調べる方法が必要だった。(コバヤシ精密工業=相模原市南区)

発明功労賞

複雑な制御不要の超短パルスレーザー発生装置=セブンシックス(技術本部マネージャー・西浦匡則氏)

 複雑な制御が不要のパルスレーザー発生装置。性能のカギとなる発振器に可飽和吸収機構と2色バンドパスフィルターを採用し、新しい発振方法を確立した。高性能で低価格な超短パルスレーザーを実現できた。従来の発振器の30倍以上の光ピークを出力し、5倍以上の長寿命化を実現。産業界や大学などでの活用を見込む。

超短パルスレーザーは材料の加工やセンシングなどの中核技術。だが発振器に使われる可飽和吸収機構の製造コストやメンテナンスで総所有コストが高くなり、一部の研究機関や大企業にしか導入されていない。(セブンシックス=東京都港区)

発明功労賞

深穴加工用1枚刃ドリル=西研(社長・寺本博氏)

 特別な設備が不要で外部からの給油で穴あけ加工が出来るドリル。従来より切削抵抗が4分の1―6分の1で、負荷が少なく精密な加工が可能になる。切り屑(くず)は工具内部に包み込んで遠心力で排出し、穴の側面を傷つけず、中心を求めて進む刃形状でノンステップで加工可能な特徴がある。海外輸出も見込む。

小径深穴加工は開けた穴が曲がることが多く、途中でドリル欠損などが発生するため高圧ポンプなどの設備が必要だった。隣接する穴は、くっつかず側面が膨らまない。将来、産業用ロボットに取り付け精密な無人作業への応用につながる。(西研=広島市西区)

(2024/3/8 05:00)

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