産業春秋／ラーメンとかき氷

東京・荻窪と言えば魚介系しょうゆラーメンの街としてファンの間では有名だ。ただラーメンの名店は都内に数多くあり、荻窪といえども並ぶほどの人気店は少ない。ところが、いつ前を通っても列ができている店がある▼店構えは１０人も入れば満席になりそうだ。男性だけでなく若い女性客も多い。味はどうかが気になっていたが、並んでみるだけの時間がとれないままに数年が過ぎた▼ようやく週末の昼、列が途切れていたのを確認して入店した。定番のしょうゆラーメンを注文すると、癖のない魚介系スープで確かにうまい。だが、これだけでは列ができる理由が分からない▼隣からシャッター音が聞こえた。小学生ぐらいの女の子が、濃厚な練乳と果実ソースがかかったかき氷をスマートフォンで撮影している。振り返ると女性２人が熱心にオレンジ色のかき氷に挑んでいた。どうやら一年を通じて食べられる大ぶりで個性的なかき氷が行列の秘密らしい。女性客が多いのも納得がいく▼ラーメンとかき氷。思いもよらない組み合わせだが、男女それぞれの客を呼びやすいメニューかもしれない。両方を注文する客もいるだろう。常識にとらわれないというビジネスの基本をみた気がした。