[ オピニオン ]
(2016/5/12 05:00)
主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に先立ち、環境相会合が15日から富山市で開かれる。気候変動対策と並んで重要テーマとなるのが「資源効率性」だ。2015年6月の独エルウマサミットでは、首脳宣言に「資源効率性を向上させるための野心的行動をとる」ことを盛り込んだ。富山での環境相会合では、より踏み込んだ議論を通じて日本の役割を明確にすべきだ。
環境面から見た資源効率性は節約やリサイクルに片寄りがちだ。しかし欧米諸国の捉え方はもっと広い。欧州連合(EU)は「より少ない資源投入で、より大きな価値を生み出すこと」と提唱し、経済的価値の創出に重点を置く。
EUは15年12月、資源効率性の引き上げを目指す「サーキュラーエコノミー(循環型経済)パッケージ」を採択した。日本では環境政策の一つである資源の循環を、成長戦略に位置付けたのが特徴。限られた資源の有効利用に知恵を絞ることで新産業を生み出し、利益や雇用を創出できると考えた。
実際の政策内容もリサイクル産業の振興にとどまらない。カーシェアリングのような製品の共同所有ビジネス、製品を長持ちさせる保守・修理、機器の遠隔監視サービスも循環型経済の一翼を担う。
EUはこれまでも環境分野のルールづくりで世界をリードしてきた。生態系に配慮した天然資源の調達を世界に訴えつつ、EU域内の企業が海外農園の利権を確保するなど、国際ルールの確立をビジネス戦略に結びつけるしたたかさがある。
日本はEUより先に家電リサイクル法を導入した実績がある。樹脂や希少金属の高度な再生技術もある。国際社会が循環型経済を実現するためには日本企業が必要とされると考える経営者は少なくない。
しかし今、世界の関心はルールづくりにある。ルールづくりに参加しなければ日本企業のビジネス機会が失われかねない。環境相会合では資源効率性のために日本が積み上げてきた実績をアピールし、今後の議論を主導してもらいたい。
(2016/5/12 05:00)