[ 政治・経済 ]
(2017/12/31 16:30)
【ワシントン時事】北朝鮮の核・ミサイル問題について、米戦略国際問題研究所(CSIS)のスミ・テリー上級研究員は時事通信とのインタビューで、トランプ米政権が軍事攻撃に踏み切る可能性を指摘するとともに、北朝鮮が核開発の完了を宣言しても、米国は圧力をかけ続けるべきだと主張した。一問一答は次の通り。
米の先制攻撃あり得るが、壊滅的な結果招く
―トランプ大統領は、過去の米政権の北朝鮮政策を失敗と断じ、圧力強化にかじを切った。
過去の政策が成功しなかったという点で、トランプ氏は正しい。だが、圧力の効果を予想するのは難しい。制裁を科されたイランが核交渉入りするのに約3年を要した。北朝鮮への厳しい制裁は2016年に発動されたばかりで、中国が本腰を入れてから数カ月だ。中国が(米国の望むレベルの)措置を講じるのは、朝鮮半島で衝突が起きそうだと本気で考えたときだけかもしれない。
―武力衝突が起きる可能性は高いか。
北朝鮮は攻撃してこないだろうが、トランプ政権では米国からの先制攻撃があり得る。核兵器を持つ北朝鮮とは共存できないと信じ込んでいるからだ。ただ、武力行使は壊滅的な結果を招く。
―解決の糸口は。
北朝鮮は恐らく、制裁が体制に真の打撃を与える前に核計画を完了させる。今のところ米朝とも交渉する気はない。残るは軍事的選択肢か、核武装した北朝鮮と共存するかだ。共存といっても(核保有国として)受け入れるのではなく、制裁をやり抜く。「(核開発に成功したからといって)それがどうした?」というわけだ。現実味のある選択肢はそれか、もしくは武力行使だけだ。
―日本など近隣諸国にできることは。
核問題を解決できるのは、米朝だけだ。北朝鮮の狙いは核計画を完成させた上で、話し合いに持ち込んでカネを手に入れ、あわよくば平和条約を結んで朝鮮半島から(米)軍を追い出すことだ。金正恩(朝鮮労働党委員長)は頭が切れる。より挑発的で、それでも武力衝突には至らないやり方を常に考えている。
―北朝鮮が交渉にかじを切る可能性は。
金正恩が「核計画は完成に極めて近いが、100%ではない」と言えば、中ロはもちろん韓国も(交渉の余地があると判断し)話し合いを主張するだろうし、国内向けにもメンツが立つ。私が金正恩なら、そのタイミングで日本に拉致問題の協議を持ち掛ける。そうなれば米国は孤立する。
【スミ・テリー氏の略歴】
69年ソウル生まれ。米ハワイ州とバージニア州で育つ。ニューヨーク大卒、タフツ大フレッチャー法律外交大学院で修士号と博士号(国際関係)取得。ブッシュ(子)、オバマ両政権で中央情報局(CIA)朝鮮問題上級分析官、国家安全保障会議(NSC)韓国・日本・オセアニア担当官、国家情報会議(NIC)東アジア担当次席情報官などを歴任。コロンビア大ウェザーヘッド東アジア研究所上級研究員、バウアーグループ・アジア上級顧問を経て、17年から戦略国際問題研究所(CSIS)上級研究員。(ワシントン時事)
(2017/12/31 16:30)