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[ 自動車・輸送機 ]
(2018/4/17 13:00)
車に通信機器を搭載してインターネットに接続し情報やデータを送受信できる機能を備えた「コネクティッドカー」の日本国内での新車搭載率は、2018年で10%程度の見通しと欧米に比べて大きく出遅れている。カーナビゲーションの搭載率が高いこともあって中国と比べても半分程度の普及にとどまり、今後見込まれる市場の急拡大に取り残されるおそれも出ている。
英調査会社SBDオートモーティブはコネクティッドカーが、新車に占める割合は18年で、ITが普及している米国では49%に達するとみている。欧州は31%、中国でも20%の車がそうした機能を備えると想定。欧州では4月からすべての新車に事故発生時のための自動緊急通報システムの搭載が義務付けられるなど普及はさらに加速が見込まれる。20年には米国や欧州が3分の2、中国が3割を超えるのに対し、日本は26%にとどまると見込む。
ネット接続機能を備えることで車の利用者はオンラインで音楽を聴いたり、最新の地図情報を得たり、食事や飲み物を車内から注文できたりするなど利便性が向上する。一方、自動車メーカーは車の走行距離やドライバーの属性や嗜好(しこう)などを集約し、データそのものを販売するほか将来の商品開発にも活用できるとされ、電動化や自動運転技術と並んで業界の今後の成長を左右する事業領域として注目されている。
マッキンゼーの調査では、コネクティッドカーによる関連ビジネスの市場は30年に7500億ドル(約80兆円)規模に成長するとみている。国内市場でコネクティッドカーが広まらなければ、データの収集やコネクティッドカーを取り巻くサービスプラットフォームの構築に乗り遅れる可能性もある。
GMがリード
調査会社IHSマークイットの松原正憲アナリストはコネクティッドカーにおいて、既に事業基盤を築き上げている欧米の大手自動車メーカーと世界規模で競争している日本の自動車メーカーにとってコネクティッド分野での出遅れは「大きなリスクだ」と指摘する。
日本市場でコネクティッドカーの導入が遅れている背景には、国内で7割程度の車に搭載されているカーナビゲーションシステムの存在が大きい。日産自動車コネクティッドカー&サービス開発部の村松寿郎氏は日本の自動車メーカーが同分野で遅れていることは確かだとし、日本のカーナビはドライバー3が必要とするほぼすべての機能を備え、メーカーの純正品以外でカー用品店でも多くの人が買い求めているとし、こうした現象は日本独自のものだとした。
また、IHSの松原氏はドライバーが自分の携帯電話をブルートゥースでカーナビなどに接続し、その通信網を使って情報を取得することに慣れているため車自体に独立した通信機器を設置することを望む消費者が少ないとみている。
コネクティビティーの領域で業界をリードするのは、米ゼネラルモーターズ(GM)だ。同社の車載通信システム「オンスター」は、96年の開始当初は緊急時の対応や安全性向上のための機能が中心だったが、最近ではレストランの予約や近隣のガソリンスタンドの価格が比較できる機能も搭載している。
中国の地場メーカーでは吉利汽車がコネクティッド機能に特化したカーブランド「リンク」を展開。自分が車を使っていないときには、他人に貸与して料金を受けられる仕組みも取り入れるなどターゲットとする若者層に訴求する工夫をしている。また、IT大手のアリババが一昨年に発売した車載用オペレーティングシステム(OS)を中国最大手の上海汽車などが採用している。
大もうけのチャンス
市場の拡大をにらんで、国内メーカーではコネクティッド分野の取り組みを強化している。トヨタは独自の車載通信機「DCM」を20年までに日本と米国市場で販売されるすべての乗用車に搭載していく方針。同年には全世界で新車の7割をコネクテッドカーにするとしている。
(2018/4/17 13:00)