[ オピニオン ]
(2016/5/30 05:00)
伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)の成功と、その後のオバマ米大統領の歴史的な広島訪問は、安倍晋三首相の外交の大きな成果だ。世界経済は依然として不透明な状況を脱していないが、安定と発展の礎が平和にあることを改めて確認した。価値観を共有する主要7カ国(G7)、特に日米両国が率先してリーダーシップをとる覚悟を新たにしてほしい。
サミットの首脳宣言は「世界経済の見通しに対する下方リスクが高まってきている」と指摘。各国が「すべての政策対応を行うことにより、努力を強化する」ことで合意した。
むろん、各国の間に温度差はある。財政出動や為替政策、さらに消費増税の再延期に傾く日本に対する視線は冷ややかだった。国ごとに事情が異なり、また経済政策にも多様な考え方がある中では当然だ。さらに日本政府の狙いが、短期的な選挙対策にあるかのようにみえることもひとつの要因だろう。
それでもG7の協調を確認できたことの意味は小さくない。かつてバブル崩壊に苦慮した日本を、先進各国は厳しく批判した。しかし、2008年のリーマン・ショック後に、彼らもまた日本を後追いするかのような政策をとった。経済政策に正解は見出しにくい。日本は先頭走者の一人であり、G7諸国と緊密に連絡を取りつつ、自らの信じる道を慎重に進むしかない。
サミット開幕にあたり、G7首脳らは悠久の時の流れる伊勢神宮を訪れた。その姿は世界の人々に、各国の結束として映ったはずだ。
閉幕後には現職の米大統領として初めて、オバマ氏が広島の平和記念公園で献花し、核廃絶を訴えた。これまで筆舌に尽くしがたい苦労を強いられてきた被爆者や親族だけでなく、多くの国民が感銘を受けた。
同時に、日米両国が戦後の最大のわだかまりを乗り越え、未来を見据えて手を握ったことは意義深い。世界の安定と発展を、両国がリードしていくための大きな基盤ができたといえる。平和を礎とした繁栄を、産業界は願ってやまない。
(2016/5/30 05:00)