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【電子版】タイ国王死去で、先行き注視する日系企業

(2016/10/14 20:00)

  • タイ国王の死去が報じられ、在東京タイ王国大使館(東京都品川区)で記帳する人々。祭壇には国王の肖像が飾られている

国民から絶大な信頼を寄せられていたタイのプミポン国王が死去してから一夜明けた14日。いくつかの在タイ日系企業は喪に服すために臨時休業やイベント中止を決めた。プラユット暫定首相がテレビ演説で通常操業を呼びかけたことを受け、大半はいつも通り営業している。しかし国王の在位が70年と長かっただけに、過去と照らし合わせて今後を予測するのは難しく、多くの日系企業は先行きを注視している。

販促イベント・テレビCM中止

日立製作所は、タイの統括会社「日立アジアタイランド」を14日休業にした。基本的に幹部のみ出社し、週明け以降の対応を協議した。喪に服す意味合いで従業員が出社しないといったケースも想定されるが、「今はまだどんな様子かつかめない。状況を注視していく」(日立広報担当者)という。

三菱自動車は14日までに、15-16日に予定していたピックアップトラックの販促イベントを中止する。今後のイベントについても中止する方向で検討する。ただ、工場は通常通り稼働する方針だ。

キヤノンは14日、タイ国内の3工場と販売会社を休業とした。同社の御手洗冨士夫会長は過去に2度、プミポン国王に謁見(えっけん)した経験を持ち、「陛下は写真が大変お好きであり、長年にわたり当社のカメラをお使いいただいたことは、この上ない栄誉であります」とのメッセージを発信した。

富士ゼロックスの栗原博社長は「現地でビジネスをしている者として国民感情をみていく必要がある。事業への影響は表向きないとみているが、(国王が大きな存在のため)影響を読むことは難しい」とコメントした。

花王は、ホームページとフェイスブックでお悔やみのメッセージを掲載した。併せてホームページでは追悼の意を込めて画面上をモノクロ処理にする対応を行った。また、当面の間テレビコマーシャルを中止する。

大半は通常通り操業

休業を決めた企業がある一方、大部分の企業はいつも通り操業している。自動車とバイクを現地生産するホンダの工場は14日、通常通り稼働中。「喪に服すという理由で有給休暇を取得する社員が増えるかと思ったが、ふたを開けてみたらほぼ全員が通常通り出勤した」(ホンダ関係者)。週明け以降も通常稼働できるとみているが「政府の発表や報道などを見て、様子見しながら対応を決めていきたい」(同)とした。

トヨタ自動車は通常通り稼働する。いすゞ自動車は通常通り操業中。自動車用照明の製造販売など二つの現地法人を持つスタンレー電気は「14日は通常通り営業しており、現時点で特に変化はない」という。現地に生産拠点を持つブリヂストンも通常操業。今後については「お客さまやサプライヤーなど外部の動きもみながら対応していく」(ブリヂストン広報)方針だ。

タイで多くの発電事業を手がけるJパワーは現時点で事業に影響はないが、今後について「王室の動きなどを注視していきたい」(国際プロジェクト担当)としている。

タイの百貨店で化粧品「雪肌精」などを販売するコーセーは「通常通り営業中。従業員に混乱はなく、何か対応するといったことは聞いていない」(コーセー広報)。資生堂は現地のウェブ上のブランドサイトでお悔やみのメッセージを順次流しているが、現時点ではいつも通り営業中。ライオンも「14日14時半現在でオフィスと工場は通常通り営業中」(ライオン広報)。

外食減る可能性も

タイで調味料を生産・販売する味の素は「現時点で工場や従業員に特に変化はない」(味の素広報)。カルピスの生産子会社があるアサヒグループホールディングスも「特に状況変化はない。経済変化については今後の状況を注意深く見守る」(アサヒ広報)としている。タイでマヨネーズやドレッシングなどを製造・販売するキユーピーは「車の通行量がやや少ないが平常通り。影響については外食産業で減少が見られるかもしれないが、状況を見守りたい」(キユーピー広報)としている。

バンコク市内から周辺の工業団地で警備サービスを提供する綜合警備保障(ALSOK)は「現地はしんみりとした状況」(ALSOK関係者)としつつも、セキュリティー面は「周辺状況に変化はない」(同)としている。オンラインサービスを中心にセキュリティー事業を手がけるセコムは「顧客の民間企業なども営業しており、特にセキュリティーを強化するといった動きはない」(セコム関係者)という。

店舗内で音楽流さず

タイで店舗展開している日系小売り各社は基本的には通常通りだが、イオンは華美なイベントや装飾は控える方針だ。東急百貨店では店内音楽は流さないようにした。

ローソンは操業を停止した工場内にある4店舗については臨時休業したが、街中の店舗は営業中。イオンやローソンでは「従業員は黒いTシャツやネクタイを身につけている」(イオン広報)。東急百貨店も「喪に服す形での服装での勤務を認めている」(東急百貨店広報)。ファミリーマートは「対応を検討中だが、今のところ影響はない」(ファミリーマート広報)としている。

ファーストリテイリングはビジネスへの影響はないとしており、セブン&アイ・ホールディングスは「まだ確認中」(セブン広報)としている。 

(注)トヨタ自動車の部分を一部修正しました。

(2016/10/14 20:00)

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