[ オピニオン ]
(2016/10/18 05:00)
今年のノーベル賞は文学賞の発表が例年より1週間遅れたが、結果的に日本人受賞はならなかった。ただ自然科学3賞では初日発表の生理学医学賞に東京工業大学の大隅良典栄誉教授が選ばれ、3年連続の日本人受賞が決まったことで、基礎科学の強さを世界に示せた。
発表の前には、世界的に受賞候補者が話題となる。まるで競馬の勝ち馬や株価の上下のように、さまざまな予想が飛び交う。果たして、こうした予想は合理的なものなのかどうか。
実は将来を予測する技術は、科学技術において重要な地位を占めている。台風の進路予測や、たんぱく質に結合する化合物を探索して創薬につなげるなどのシミュレーションは、我々の生活に大きく貢献している。
近年の研究機関では“出口”を目指す応用研究の重要性が叫ばれている。その背景には予測技術が発展したこともあるだろう。半面、将来のイノーベーションの種となるような基礎研究が、おろそかにされてはいないだろうか。
大隅栄誉教授の受賞理由である「オートファジーの解明」も基礎分野の研究であり、出口が分かっていて始めたわけではない。数十年先の未来に花開く研究を予測するのは、実に困難に思えるが、続けなければならない。
(2016/10/18 05:00)