[ オピニオン ]
(2016/11/25 05:00)
色づいた木の葉がセピアに変わり、木枯らしに散らされて路上を舞う。そうして積もった枯れ葉を、みぞれが音もなく濡(ぬ)らす。晩秋を押しのけて冬が先触れのように顔を出す。東京都心は24日、54年ぶりに11月の降雪を記録した。
間もなく本格的な冬。過ぎし1年を回顧する季節となる。日本漢字能力検定協会による恒例の「今年の漢字」もそのひとつ。昨年は『安』が選ばれて、安心か不安かが話題になった。
今年の大ニュースは、内政では4月の熊本地震や8月の天皇陛下の「お気持ち」、初の女性都知事誕生と五輪会場見直し。外交では6月の英国による欧州連合離脱決定と、11月の米大統領選の“トランプ・ショック”。どれも『揺(ゆ)』らぎばかりで安定には遠い。
産業界ではシャープが台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の、三菱自動車が日産自動車の傘下に入った。ソフトバンクによる英ARMの超大型買収も。大企業が次々と他に飲み込まれる姿をノーベル生理学医学賞の大隅良典先生のオートファジー(自食作用)にひっかけて『食』はどうか。
脱デフレや世界経済の先行き不『透』明が、いまの日本を最も象徴しているようにも思える。さて12月12日、京都・清水寺で何の字が揮毫(きごう)されるか。
(2016/11/25 05:00)