[ オピニオン ]
(2017/2/6 05:00)
「日本一の産業県」(大村秀章知事)を自認する愛知県らしく、産業界の声をくみ上げて実効性の高い産業防災モデルを生み出してもらいたい。
産学官が連携し、地域防災の協力体制を作り上げようという取り組みが愛知県で始まった。巨大地震などの大規模自然災害が発生した場合に、地域産業を守るのが目的だ。
具体的には、名古屋大学の減災連携研究センター(名古屋市千種区)内に「あいち・なごや強靭(きょうじん)化共創センター」(仮称)を設立する。ここに県内の産学官の関係者が集まり、防災・減災に関するノウハウや知見を持ち寄る。
センターでは被災時のインフラ復旧の優先順位などの研究・開発とともに、産業の早期復旧に必要な地域の協力体制の構築と、それを担う人材の育成にも取り組む。7月の開設を目指し、県内で連携を深めつつ、将来的には協力体制の輪を中部圏に広げていくことも検討するとしている。
産業界の防災対策は、事業継続計画(BCP)の策定など企業単位のものが普通だ。ただ中小企業はBCPの必要性を感じていても、コストや手間を考えて二の足を踏む経営者が多いのが実態だろう。
一方、大学などの研究機関では防災・減災の研究が進んでいる。最新の知見を産業界に還元すると同時に、産学官が連携して研究開発や対策を戦略的に進める枠組みには、相応の効果が期待できる。
災害時には人命救助が最優先される。自治体が産業活動の停滞リスクを軽減する施策を準備していることは、まれだ。しかし東日本大震災ではサプライチェーンの広がりから、直接的被害のなかった地域の産業まで打撃を受けた。
そう考えると、地域の防災・減災対策は日本経済の強靱化に直接つながる取り組みといえる。モノづくりの集積が高い愛知県が、先陣を切って立ち上がったことを頼もしく思う。この取り組みが、世界に向けて発信できるだけの新たな産業防災モデルになることを期待する。
(2017/2/6 05:00)