[ オピニオン ]
(2017/5/12 05:00)
都市部の商業施設やオフィスビルで物流は重要な役割を果たす。一方で、人の移動に比べてモノの移動に十分に配慮した建築物は少ない。設計段階から物流機能を意識した取り組みが重要だ。
大規模施設・ビルには、多くのトラックが荷物の搬入のため日々出入りする。だが、例えば屋内駐車場の天井が低くてトラックが入れなかったり、トラック用の駐車スペースや荷役に利用できるエレベーターが不足したりするなど、問題が生じているケースが少なくない。
こうした際、路上での荷下ろしを誘引し、車や歩行者など道路交通の妨げとなるほか、排ガス・騒音の発生につながる。地下駐車場で前のトラックが荷物を搬出するまで並んで待ち、渋滞が生じる。物流に目を配らないと、利用者に無駄な時間やコスト、さらには不快な思いを与えてしまう。
国土交通省はこうした状況を改善するため、物流を考慮した建物の設計・運用に向けた「手引き」を作成し、普及・啓発に乗り出している。建物の基本構想から管理の段階まで、物流について検討するフローを示し、チェック項目を挙げた。
例えば標準的な集配車両である2トン車の天井有効高や駐車スペースの広さ、台車による搬送を前提とした動線を確保するための荷さばき駐車場のあり方などを明示している。
手引きは建物の開発・設計・管理に携わる人や、建築主、物流会社、テナントなどが参考にすることを想定する。これまで物流を考えていなかった事業者が、一部分でも取り入れるだけで円滑な物流の実現に近づく。
建物の設計者や建築主は、収益に直接結びつかない物流機能の確保、整備には消極的かもしれない。だが手引きに沿ってポイントを押さえれば、無駄なコストやスペースを避けられることも考えられる。
現在、大都市圏でさまざまな再開発プロジェクトが動いている。一方で商品やサービスの提供に物流機能は欠かせない。関係者は意識的に取り組んでもらいたい。
(2017/5/12 05:00)