[ オピニオン ]
(2017/5/15 05:00)
身内の介護のために仕事を辞める介護離職者が増えている。企業は介護保険などの法制度だけでなく、テレワーク(在宅勤務)などの働き方改革を通して、介護離職防止に向き合うことが必要だ。働き方改革は女性活躍をテーマに掲げる企業が多く、育児支援などでさまざまな取り組みがなされている。少子化対策も踏まえ、育児支援は働き方改革の1丁目1番地となっている。
介護離職者は全国で年間10万人に及ぶといわれているが、一般にはよく知られていない。親の介護といっても、病状や家庭環境によって状況が異なり、一律的には論じられないためだ。
ただ介護離職者は年齢的にはベテランの管理職や経営幹部が多く、企業にとって大きな痛手なのは言うまでもない。超高齢化社会への道を歩むわが国にとって、介護離職は避けて通れない課題となっている。
晩婚化と出産年齢の高齢化により、子育てと親の介護が同時期に発生する「ダブルケア」も深刻だ。自らが持病を持ちながら、定年を延長し、親の面倒をみるケースも少なくない。
介護する側が直面している現実は厳しい。身内に認知症の疑いがあっても適切に対処できないことが多い。行き詰まってから病院にいくと、いきなり「在宅介護か、介護施設か」といった選択を迫られ、どうすればよいか分からないままに会社を辞める人もいる。
育児支援と介護支援は同じ土俵では語れないが、働き方改革の一環として捉えることは可能だ。時間や場所にとらわれないテレワークは子育てはもとより、在宅介護の支援にも役立つ。
テレワークのソリューションを提供するIT企業では「テレワークの仕組みの中に介護支援の機能をどう組み込むか」が俎上(そじょう)に載っている。介護支援で必須なケアプランの策定では人工知能(AI)の活用も検討されている。
労働人口の減少が叫ばれる中で、働き方改革への期待は高い。女性活躍とともに高齢化時代を見据えた取り組みも忘れてはならない。
(2017/5/15 05:00)