[ オピニオン ]
(2017/6/20 05:00)
政府は2018年度に医薬品の副作用情報を分析・評価する国内初の大規模医療情報データベース(DB)「MID―NET」を本格運用する。データの活用により、早期の安全対策や副作用の原因究明といった医療の質向上につなげてほしい。
医薬品の副作用報告は国内外から年間約40万件ある。現在はこれを医薬品医療機器総合機構(PMDA)が分析・評価し、添付文書の改訂などの安全対策を実施している。だが報告がないケースや報告から副作用の発生リスクを算出したり、他の医薬品と比較したりすることは困難だった。
MID―NETは全国の大学病院など10拠点23病院を結び、電子カルテやレセプト(診療報酬明細書)、DPC(医療費の包括支払い)など各種医療情報を集め、利用する仕組みだ。11―16年度までで総額47億円を投じ、整備を進めてきた。18年度の運用時には400万―500万人規模のデータが利用でき、毎年45万人程度拡張していく計画だ。
副作用情報を能動的に集められるため、副作用の発生頻度の把握や薬の副作用か病気自体の症状かの判別、実際の安全対策の効果検証も可能になる。
個人情報の保護にも配慮している。PMDAに集められる情報には氏名や住所などが削除され、希少疾病などの少数データは実数の公表を制限するなど個人が特定できない仕組みだ。患者個人が利活用を断る「オプトアウト」も取り入れている。
大規模データの活用は、製薬会社の市販後調査のあり方も大きく変える可能性がある。調査に医療現場の患者情報(リアルワールドデータ)を活用することで調査の精度を向上でき、長期間で膨大な費用がかかる市販後調査の効率化が期待できる。
欧米では1000万人規模の大規模データベースが稼働し、安全性評価のデータ活用で先行する。MID―NETはデータの管理や標準化などに手間取り、当初計画から2―3年遅れた。医薬品の品質管理体制の強化に向けて、遅滞なく稼働にこぎつけてほしい。
(2017/6/20 05:00)