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(2017/8/17 05:00)
世界の全130工場、2500の生産ライン、生産設備15万台―。デンソーは2020年までに、世界中の自社工場を対象にIoT(モノのインターネット)を全面導入する。この「ファクトリーIoT」は、生産技術の担当が長かった有馬浩二社長が構想を練ってきた大きなプロジェクト。目標はグループ全体での生産性を15年と比べて30%向上させることだ。
「気に満ちあふれた、ケタ違いの現場をつくる」。有馬社長がここで強調する現場とは製品開発やモノづくり、販売・サービスなどすべてを含んでいる。そして、モノづくりに関してはファクトリーIoTが大きな役割を担う。
センサーなどの高性能化や価格低下で、工場でもIoTを導入しやすい環境になった。デンソーが進めるファクトリーIoTでは、製品・設備の振動や音、温度の微小な変化のほか、熟練者の知恵と勘やこつ、設備不具合の予知・予兆などの情報を“見える化”する。その情報は人が共有し、気づきや改善につなげる。
一連の取り組みで、生産設備は故障の予知や予防ができるため、生産ラインを止める頻度や時間を減らせる。「生産性が上がれば従業員の負荷も減り、より有効に知恵を出せる時間が捻出できる」(有馬社長)と、あくまでデンソーは“人の力”に重要性を見いだす。この点が、人を介在しないファクトリーIoTを志向する欧米流との違いだ。
これまで知り得なかった情報を手にすることで、現場力を飛躍的に高めて日本流の進化をし続ける工場づくりを実現する。グローバルで一体となって水平展開し、機械では導き出せない革新的な改善を、日本企業で定評のある製造現場の力で創出するわけだ。
自動車部品世界2位のデンソーは駆動系部品やセンサー、カーエアコン、制御部品、モーターなど商品群も幅広く、ファクトリーIoTの全面導入は大きなチャレンジだが、その分効果も期待できる。20年には協力会社への展開も考えており、壮大な青写真を描く。(名古屋・今村博之)
(2017/8/17 05:00)