[ オピニオン ]
(2017/9/12 05:00)
環境に優しい電気を生む太陽光パネルが、逆に環境負荷を増やしては困る。関係省庁は実態調査を急いでもらいたい。
総務省は太陽光発電設備の廃棄処分に関する実態調査に基づき、経済産業省と環境省に適切な対策をとるよう勧告した。再生可能エネルギーの普及を急ぐ一方で見過ごされがちだった問題である。
勧告内容は大きく2点ある。ひとつは災害などで損壊したパネルから有害物質が流出したり、住民が手を触れて感電したりする危険への対処。もうひとつは今後、大量発生が確実な廃棄パネルの適切な処理方法だ。
損壊パネルの感電は、地震などで倒れた住宅の屋根上パネルでも起きる問題だ。しかし産業界の立場で懸念されるのは、工場団地の一角などに設けられ、管理者が常駐しない中規模のソーラー発電所が近隣住民を傷つけてしまう危険性である。
有害物質の流出は、災害時だけでなく旧式パネルの大量廃棄時にも起こり得る。総務省行政評価局によれば、太陽光パネルには鉛などを使っているものがあるが、中国製など安価に大量導入されたパネルの多くは有害物質の有無を明らかにしていない。しかも輸入した業者や廃棄に当たる業者も、そうした危険性を十分に認識しないまま、多くが産業廃棄物として遮水設備のない処分場に埋め立てしているのが実情という。
太陽光パネルの原料の多くはガラスであり、有害物質は必ずしも多くはない。ただ今後、激増する廃棄パネルがまとまって埋め立て処分された時、どんな環境負荷が起きるかは早急な調査が必要だ。
また将来は廃棄パネルを回収し、リサイクルするなどの新たな仕組みを構築する必要もあるだろう。すでに経産省などはリサイクル技術の開発に乗り出しているが、採算ベースにのせるのは今後の課題である。
再生可能エネの固定価格買い取り制度により、全国に太陽光発電設備が増えたことは望ましい。それが将来、廃棄されたまま“負の遺産”にならないよう取り組んでほしい。
(2017/9/12 05:00)