[ オピニオン ]
(2017/12/1 05:00)
整理・整頓・清掃を意味する「3S」をキーワードに、元気な中小企業の輪が全国に広がりつつある。3Sは目新しい概念ではないが、生産現場や事務所で身近なカイゼン活動として中小も取り組みやすい。3Sを極めて、人材育成や企業価値向上につなげている事例もあり、効果に注目したい。
3Sは要るものと不要なものを仕分ける整理、必要なものが誰でもすぐに取り出せる整頓、職場をきれいにする清掃を、地道に実践する活動だ。3Sの目的に掲げるのは「安全、快適、効率的な職場を作ること」。そして真の狙いは「守ることを決めて、決めたことを守る」社風の確立といわれる。
3S活動を通じ、従業員を一つの方向にまとめることにも有効だ。ただ地道な活動のため、継続はマンネリ化との戦いになる。経営トップが3Sに本気で取り組む姿勢が求められる。
大阪に3Sのトップランナーといわれる中小製造業がある。金型製造の枚岡合金工具(大阪市生野区)と製缶・板金加工の山田製作所(大阪府大東市)の2社だ。従業員はともに20人前後の規模だが、両社の徹底した3S活動の事例を学ぼうと、見学者は絶えない。2社は一見すると通常の町工場だが、3Sにかけるトップや現場の姿勢は際立っている。
3Sを全国の中小企業に広める動きもある。元気な中小企業を増やし連携を促すため、全国を飛び回る女性経営者は、3Sを学び合う活動グループを岩手や宮城、東京、香川、島根などに相次ぎ立ち上げている。
3Sの事例発表を行い交流するイベント「3Sサミット」も発案。2012年から大阪工業大学で毎年開いてきた。今年は12月2日に実施し、約250人の参加を見込む。
多くの企業には、仕事の基本ともいえる3Sや5Sは当たり前に実践しているという考えがあるかも知れない。ただ、大手企業でモノづくりの信頼性が揺らぐ問題が相次ぐ中、形だけになっていないか。「決めたことを守る」という3Sの真の目的を再認識してもらいたい。
(2017/12/1 05:00)