[ 機械 ]
(2018/2/7 05:00)
【高速・超高精度 同時5軸加工門形マシニングセンタ「UD−400/5X」】
究極の金型加工の実現―。ヤマザキマザックがこの製品に込めた思いだ。加工の「速さ」と「美しさ」という相反するテーマの両立に挑んだ。
金型加工には高い品質が求められるが、金型メーカーからは、加工の速度を求める声も高まっている。同社では金型加工に特化した機種は従来なかった。高速加工によって生じる振動や発熱の影響を抑え、美しい加工面に仕上げるため、新素材、技術を盛り込んだ製品開発に着手した。
加工の速さは折り紙付きだ。主軸の回転速度は最高毎分4万5000回転と、同社製品では最速。しかし、速くなればなるほど振動や熱変位の対策が求められる。
振動対策では、ベースやコラムなどに新素材を採用した。ミネラルキャストだ。花こう岩95%とエポキシ樹脂5%から成り、人工グラナイトとも呼ばれる。通常採用する鋳物に比べ、振動の減衰時間を10分の1に抑えられる。欧州では高級機種に採用されるが、「日本で量産機種に採用するのは初めて」(西田貴美技術本部商品開発2部部長)という。
鋳物から変更し、材料の特性が変わるため、設計の見直しが必要になった。村瀬徹商品開発2部グループリーダーは「今までのノウハウは通用しない」と手探りで開発に挑んだ。細い溝を付けるなど形状の工夫で、見直しのめどが付いた。
また、発熱対策では、新たな技術を盛り込んだ。主軸の冷却機能だ。主軸の軸心と外筒に冷却油を通す機構を採用した。主軸は加工前の暖機運転により伸ばし、長さを安定させる。通常は伸びが収束するのに2分間ほどかかるが冷却機能により1分間に短縮できる。
加工の速さと美しさを両立した製品が、こうして完成した。山本亨上席執行役員技術本部副本部長は「高精度な上に高生産性の機種は他社にはない」と自信を見せる。人工骨など医療分野への売り込みも目指しており、引き合いが来ている。新機軸を盛り込んだ製品の今後に期待だ。(名古屋・戸村智幸)
【製品プロフィル】
長時間高速での連続稼働が必要な金型加工に用途を絞った5軸立型マシニングセンター(MC)。門型MCをベースに開発したため左右対称の構造となっており、剛性の高さを実現した。同社は数値制御(NC)装置を自社開発しており、山本上席執行役員は「NCの進化に機械が追い付いた」と製品の意義を説く。
(2018/2/7 05:00)