[ 政治・経済 ]
(2018/3/9 10:00)
(ブルームバーグ)トランプ米大統領は8日、鉄鋼とアルミニウムに輸入関税を課すことを命じる文書に署名した。公約を実行する一方、カナダとメキシコへの適用を除外し、両国以外についても国家安全保障に基づき除外する可能性を残した。
大統領はこの日午後、鉄鋼・アルミ業界の労働者立ち会いの下で文書に署名した。鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を課す。これは3月1日にトランプ氏が計画を公表した水準と同じ。関税は15日以内に発効する。
トランプ大統領は計画を支持した経済アドバイザーらや関連業界の労働者が同席する中、「外国製鉄鋼・アルミに対して輸入関税を課すことで米国の国家安全保障を守る」と表明。貿易相手国が米国からの輸入に課す関税と同率の関税を、相手国からの輸入に賦課する「相互税」の実行を計画していることも明らかにした。
大統領はこれまでの米国の政治指導者が国内製造業の落ち込みを放置したと指摘し、保護主義派のマッキンリー元大統領を引き合いに出して今回の関税措置を擁護した。
身内の共和党から批判
この措置を与党共和党議員らは厳しく批判した。フレーク上院議員(アリゾナ州)は、「いわゆる『柔軟性のある関税』は、保護主義と不確実性という経済成長の死を招きかねない2つの毒薬の融合物だ」と指摘。ハッチ上院財政委員長は「端的に言うと、米国の製造業者と労働者、消費者に対する増税だ」と述べた。
ライアン下院議長は大統領の発表後に声明文で、「私は今回の行動に異議を唱えるとともに、意図せぬ結果を心配する」と述べ、「中国のような国による紛れもなくひどい貿易慣行はあるが、こうした慣行に照準を合わせた法執行の方がより良いアプローチだ」と主張した。
大統領は当初、関税に例外を設けない方針だったが、共和党内からも米国の雇用に悪影響を及ぼし、消費者物価を押し上げ国内製造業に打撃を与えると厳しく批判され、適用除外を設けて譲歩した。欧州連合(EU)など貿易相手国は報復措置を取る構えを見せており、貿易戦争の懸念も浮上。国際通貨基金(IMF)の ラガルド専務理事は貿易戦争に勝者はないと述べ、提案された関税は経済的に深刻な悪影響を招く恐れがあると警告していた。
こうしたメッセージは伝わったようだ。当局者が匿名を条件に語ったところによると、トランプ大統領はカナダとメキシコについて、地域的に重要な同盟国であり北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉における米国の交渉相手であるという位置づけから適用除外とすることに同意した。また、他の貿易相手国も関税適用除外を求める選択肢があり、同盟国は関税が安全保障への打撃となることを示せば適用除外となる可能性がある。
原題: Trump Signs Tariff Order on Metals With Wiggle Room for Allies(抜粋)
(2018/3/9 10:00)