[ 地域経済 ]
(2018/5/3 05:00)
企業の歴史的役割紹介
航空機産業が集積する中部地方で、航空機をテーマにした展示施設が充実してきた。三菱航空機(愛知県豊山町)が開発中の国産小型ジェット旅客機「MRJ」など、中部地方にゆかりのある航空機を題材にした施設の開館が相次ぐ。航空機を身近に感じ、親しみを持ってもらうための取り組みも目立つ。(名古屋・戸村智幸)
【体感型イベント】
戦後初の国産旅客機「YS11」から米ボーイングの旅客機群、そしてMRJ。いずれも中部地方で製造された、または今後製造される航空機だ。三菱重工業、川崎重工業、SUBARU(スバル)と機体製造の大手3社が愛知県と岐阜県に工場を構え、数多くの機体を世に送り出した。
そうした歴史を知り、機体を見学できるのが、2017年11月開館のあいち航空ミュージアム(愛知県豊山町)だ。県営名古屋空港そばに立地し、YS11や戦前の戦闘機「零戦」、三菱重工が手がけたビジネスジェット機「MU300」などが所狭しと並ぶ。
子どもたちに航空機に興味を持ってもらうため、体感型のイベントを開催しているのが特徴だ。
ゴールデンウイーク中は、機体の内部公開や、紙飛行機教室を開催している。東京大学大学院教授(航空工学専攻)でもある鈴木真二館長が紙飛行機教室を監修し、良く飛ぶための作り方や投げ方を教える。
愛知県の大村秀章知事は、今後について「学校の社会見学や夏休みを通じて多くの子どもたちに来てほしい」と期待する。
【展示と工場一体】
あいち航空ミュージアムから徒歩数分の場所には、同時開館したMRJミュージアムがある。三菱重工が運営し、MRJの最終組立工場の上層階に立地する。
特徴は予約制だ。希望の日時をインターネット上で申し込み、ガイド付きで見学できる。MRJの実物大模型の内部に入り、操縦室を見たり、シートに座ったりできる。見学後半には、最終組立工場のデッキを歩いて、機体の組み立て作業を眺められる。
三菱重工の担当者は開館前の報道公開で、「展示と工場が一体になっている施設は、アジアでここぐらい」と珍しさを強調した。今年2月末には、入館者が1万人を超えた。
両施設に加え、今夏には中部国際空港(愛知県常滑市)がボーイングの中大型機「787」の初号機を展示する複合商業施設「フライト・オブ・ドリームズ」を開業する。787の機体製造の35%を日本企業が担っており、同空港から翼や胴体がボーイングの米国の工場に輸出されていることから、初号機を譲り受けることが決まった。
【初号機“里帰り”】
17年12月には、同空港に駐機した初号機を、約1キロメートル離れた施設の建設場所に移動するイベントが開かれた。移動中に機体を止めて見学時間が設けられ、先着順で当選した3500人が間近で眺めた。
イベントに出席したボーイングジャパン(東京都千代田区)のブレット・ゲリー社長は「中部国際空港は初号機にとって、ふるさとと呼ぶにふさわしい」と“里帰り”を喜んだ。
このほか、18年3月には「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」(岐阜県各務原市)が改装を終えた。目玉は戦前の戦闘機「飛燕(ひえん)」の展示だ。製造元の川崎重工が修復・復元し、当時の姿を取り戻した。
戦前の戦闘機に始まり、日本の航空機製造の大きな一歩となったYS11、世界を結ぶボーイング機、そしてMRJまで。日本の航空機産業が刻んできた歴史を体感できる施設が、中部地方にはそろう。航空機を知る旅に出よう。
(2018/5/3 05:00)
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