[ オピニオン ]
(2019/3/12 05:00)
“ポスト・ゴーン時代”の、ルノー・日産・三菱アライアンスのあり方をめぐる3社の議論が進んでいる。次の3段階に簡略化して推測してみたい。まずはアライアンスを今後も維持するべきかどうか。次に維持するならどのような資本関係がいいのか。最後に、各社の競争力を高めるためにはどうすべきかである。
アライアンス自体の是非だが、今のところ日産自動車の西川広人社長は関係を解消するつもりはないようで、カルロス・ゴーン被告の後任であるルノーのジャンドミニク・スナール会長との会合も前向きな雰囲気が伝わっている。両社の間では、車の中核的な部品セットであるプラットフォームの共用化が相当程度進んでおり、調達の一本化によるコスト削減も根付いた。これを解消し、提携前に時間を逆戻りさせることは現実的ではないだろう。
関係を維持するならどのようなあり方が望ましいのか。ルノーは日産株の43・7%を出資する筆頭株主で、日産はルノー株の15%を保有するが議決権はない。そして日産の傘下には34%を出資する三菱自がある。一連のゴーン退任劇は、このようないびつな関係から来る長年の歪みが鬱積(うっせき)し、極端な形で現れたものだろう。ルノーはかねて、筆頭株主である仏政府の意も受けて、経営統合を含めて日産との関係を強化固定したい意向を持つとされる。一方日産は、規模や技術力、資本市場の評価のいずれも劣るルノーからの資本的な支配を解消したいはずだ。この点での両社の争いはまさに権力闘争そのもので、一致点を見いだすのは簡単ではない。
ではどうすれば、各社の競争力が高まるような関係が築けるのか。まずはルノーの筆頭株主である仏政府の政治的介入が、経営判断をゆがめることが少ない仕組みが必要だろう。的確で迅速、公正な意思決定をどう実現するかも重要。簡素な合議体を作って、3社の“扇の要”のような位置にいたゴーン被告に取って代わるような役割を果たすことも考えられる。関係者の智恵が問われるところだ。
(2019/3/12 05:00)