[ オピニオン ]
(2019/3/19 05:00)
伊藤忠商事によるデサントへのTOB(株式公開買い付け)が成立した。伊藤忠はデサント株の保有比率を当初の約30%から40%まで引き上げたことで、より経営への関与を深めていく。ただ、デサントがTOBに反対を表明し、互いに経営方針をめぐって意見を対立してきたことから、両社のしこりは残ったままだ。今回のTOBがデサントの企業価値向上につながるのか、注視が必要となる。
日本では珍しい国内上場企業同士の敵対的TOBとなったことから、社内外で関心を集めた。今後、両社で対話が再開され、デサントの新経営体制や成長戦略が話し合われる。
伊藤忠は、創業家出身の石本雅敏社長以下、取締役構成の大幅刷新を求めている。現在のデサントの取締役体制はデサント側6人、伊藤忠側2人、社外2人の10人。両社とも現在の取締役数を5―6人に減らすことで一致するが、両社から独立した社外取締役の数で半数以上にこだわるデサントの要望に、伊藤忠は難色を示す。
デサントには、伊藤忠が筆頭株主の立場を利用し取引先の指定など自社利益優先のビジネスを押しつけられるのでは、という懸念がある。ただデサントも売上高の半分、利益の多くを占める韓国一本足打法から、日本・中国もバランスよく成長させるグローバル展開へ向けた明確な事業戦略が描けていない。
今回、経営陣だけでなくデサント社員の多くもTOBに反対姿勢を示していたことを、伊藤忠の経営陣は注視しなければならない。資本の論理をたてに強硬姿勢が目立つようなら、デサント社員はついてこない。
デサントには、雨・雪に強く保温性を高めた画期的なダウンウエア「水沢ダウン」を開発したように、とがった個性を出し優れたモノづくりを実践してきた強みがある。デサントの中長期的視点でブランドを育てる戦略と、スピード感重視の行動で結果を出す伊藤忠の戦略をどう最適に折り合わせるか。今後、伊藤忠主導の取締役体制になるのは濃厚だが、両社が再び真の協力体制を築くことが必要だ。
(2019/3/19 05:00)
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