[ オピニオン ]
(2019/4/23 05:00)
トヨタ自動車は2万3740件のハイブリッド車(HV)関連特許を10年間、無償開放する。優れた技術を開発しても1社で市場を成長させるには限界があり、特許を避けた技術が普及すればガラパゴス化してしまう。今回の決断は世界中の電動車に自社の技術を普及させることで、システムサプライヤーとなって覇権を握ろうというものだ。さらに自動運転や乗り物をサービス化するMaaS時代の到来を前に、仲間を増やして規格争いで優位に立とうという狙いもある。ガリバーであっても、腕力だけでは生き抜けない知財の時代を象徴している。
特許を最適なタイミングで開放し仲間を増やす「オープン&クローズド戦略」は究極の囲い込み戦略だ。魅力ある特許を開放することで世界市場が押さえられる。自転車部品メーカーのシマノは最も成功した例だろう。HVはトヨタの技術が先進的で優れているがために、他社が追随できず市場が広がっていない。そして電動車では、技術的にシンプルな電気自動車(EV)が注目されている。特許開放で一気に覇権奪還をもくろむ。
開放する特許は制御技術やブレーキ時の発電・回生技術など、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)といったどの電動車にも使える技術。各電動車に普及すれば車間連携など“つながる”技術となり、それは自動運転時代の業界標準に近づくことを意味する。もちろん他社が特許書面を見てすぐにまねできる技術ではない。システムやユニットの採用を有償で支援する。トヨタには量産によるコスト効果とともに新たな商機も生まれる。そして他社が開放特許を使う間に、一歩先の技術開発に力を注いで優位性を保つ戦略だ。
97年に初代HVを開発した際は、半導体から電磁鋼板まで徹底して自社開発した。グループ企業であっても他社がコア技術を持てば、技術や価格をコントロールできないからだ。それが今、HVユニットの開発・製造をデンソーに集約する。知財の時代にはスピード開発も必須条件ということを示している。
(2019/4/23 05:00)
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