(2020/9/11 05:00)
水素は利用段階で二酸化炭素(CO2)を排出せず、多様な製造が可能な有望なエネルギーの一つ。海外からより安価な水素を導入するプロジェクトを軌道にのせ、水素社会の実現に弾みをつけてもらいたい。
豪州の褐炭(低品位の石炭)から水素を製造し、液化した水素を専用運搬船で日本へ長距離輸送する、水素サプライチェーン実証試験が2020年度中にも始まる。岩谷産業や川崎重工業、シェルジャパン、Jパワーなどの7社で構成する技術研究組合「ハイストラ」が担う。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて、15年度から技術実証が進められてきた。
約9000キロメートルある日豪間を海上輸送するため、川崎重工業は世界初の液化水素運搬船を建造した。さらに神戸空港島(神戸市中央区)に液化水素輸入基地も整備し、岩谷産業などが基地の運用に向けた試験を進めている。近く水素運搬船が同研究組合に引き渡され、神戸の輸入基地をベースに国内での実証試験が本格化する。日豪を結んで水素を運搬する実証試験は、21年2月頃に計画される。
豪州側でも現地政府の助成を受け、ガス精製から荷役基地までを整備しての実証が進められてきた。CO2分離回収・貯留(CCS)技術と組み合わせ、CO2フリーの水素を製造する。豪州産の褐炭は埋蔵量が豊富だが、多くの水分が含まれ、これまで使途は限定的だった。水素利用が実用化されれば、安価な原料として期待がもてる。
水素関連のプロジェクトは、燃料電池車(FCV)や水素ステーションなどにスポットが当たりがちだ。ただ安価な水素の原料を安定的に確保し、製造や輸送、貯蔵するサプライチェーンの整備も重要。水素を運びやすくするため、気体の水素をマイナス253度Cの極低温にし体積が800分の1となる液体にして輸送する技術などは、日本企業が地道に培ってきた。
国際的な水素サプライチェーンは30年頃の商用化を目指す。日本発の取り組みで、水素社会を切り開いてほしい。
(2020/9/11 05:00)
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