社説/日銀短観、格差広がる 生産性高めコロナ後に備えよ

(2021/4/2 05:00)

製造業の回復は日本経済にとって明るい材料だが、先行きには慎重な見方も多い。コロナ後を見通した積極性も必要だ。

日銀が1日に発表した3月の短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の業況判断DIは2020年12月の前回調査から15ポイント改善のプラス5となり、コロナ禍前の水準を回復した。

中国や米国向けの輸出拡大で生産が増加し、今年に入ってからの円安傾向や過去最大の予算成立も改善の要因。業種別では自動車、電気機械、鉄鋼、非鉄金属の好調が続いている。

一方、非製造業の改善幅は4ポイントと小幅にとどまった。年初の緊急事態宣言再発令やGoTo事業の停止で飲食、宿泊など各種サービス業の業績悪化が伸び悩んだ。製造業と非製造業で景況感の格差が拡大した。

中小企業は、製造業は14ポイント改善したが、非製造業はわずか1ポイントの改善に留まった。製造業、非製造業とも依然として「景気が悪くなった」と答える企業の割合が多い。

21年度の設備投資計画は、全規模・全産業で前年度見込みに比べ3・0%増。米中の設備投資、住宅投資が堅調なほか、国内のオンライン、第5世代通信(5G)関連需要増が要因。例年は3月時点では企業の計画が固まっておらず、マイナスでスタートするが、前年度が減少した反動で、3月調査としては初めてプラスの計画となった。

先行きは中小企業非製造業が5ポイント悪化を見込み、大企業製造・非製造業、中小企業製造業とも横ばい圏の小幅な改善予想。感染収束が見通せないことや、半導体の供給不安が製造業の回復に水を差すとの懸念から、企業行動に抑制的に働いている。

政府は21年度予算や20年度第3次補正予算の執行を急ぎ、営業時間短縮などで経営難に苦しむ非製造業が、構造改革に取り組む支援を強化すべきだ。

日立製作所が約1兆円を投じて米国IT企業を買収するなど、将来を見据えた大型投資を決断する企業も出てきた。成長の機会を逸しないためにも、今こそ企業は生産性向上へ踏み出してほしい。

(2021/4/2 05:00)

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