(2021/7/15 05:00)
暮らしと経済活動に多大な影響を及ぼすエネルギー政策は、実現可能なものであるべきだ。
経済産業省の総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問会議)による2030年度の「エネルギー基本計画」策定作業が大詰めを迎えている。安全と安定供給、経済性、環境の「S+3E」を踏まえた日本の電源構成のあるべき姿を示すことが最大のテーマである。
ただ、政府が国際社会に表明した2030年までに温室効果ガスの排出量を13年度比46%以上削減、という目標が計画作りに重くのしかかっている。
これまでの議論で、30年の総発電量は9500億キロワット時と試算。再生可能エネルギーの発電量を19年の1・7倍の約3120億キロワット時とした。総発電量に対する比率は約33%。ただしこれだけでは温室効果ガス46%削減の達成には不十分との見通しが示された。
原子力発電については、現行計画の20―22%を維持する方針だが、そのためには休止中の原発再稼働を含め27基分を動かすことが前提となる。
一方で、化石燃料である石炭火力、LNG火力発電については、比率を可能な限り引き下げるとし、数値は明記していないものの、石炭・LNG合計で40%以下にする方向となった。
現時点では安定供給に懸念が残る内容だ。再生エネの主力電源化は日本が成し遂げるべき課題だが、30年というごく近い将来だけを見れば太陽光発電が中心になる。すでに適地は限られている。発電コストは大幅に低下したが、送電網や蓄電設備の設置には別途大きな費用が発生する。原発も国民の理解は得られておらず再稼働の見通しは明確ではない。
主力電源のありようが不明確な状態で、現在の主力電源である火力の大幅削減は果たして可能なのか。LNGの調達には、供給国との長い交渉が必要で、日本の方針転換は今後の調達コストに大きな影響を及ぼす。
経産省は7月後半にも計画案を示すとしている。安定供給を大前提にした現実的な計画となることを期待する。
(2021/7/15 05:00)
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