社説/アンモニア混焼の実証事業 実績示し、世界を巻き込め

(2021/8/30 05:00)

燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しないアンモニアは、脱炭素電源への有力な選択肢の一つと期待されている。世界への普及を見据え、商用化の課題を乗り越えてもらいたい。

JERAの碧南火力発電所で、既存の商用石炭火力発電所におけるアンモニア混焼の実証事業が間もなく始まる。JERAとIHIが新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を得て取り組む。

まず同発電所5号機で異なる材質のバーナー2本を用いてごく少量のアンモニア混焼から始め、バーナーの性能評価や燃焼時に発生する窒素酸化物(NOX)の脱硝技術を検証する。2024年度には同発電所4号機でバーナー48本、アンモニア20%による本格的な混焼実証へと移行させる計画。

アンモニアが注目されるのは、石炭火力発電設備を利用しながら混焼割合に応じてCO2の排出を抑制できることだ。アンモニア100%の専焼技術を確立すれば、脱炭素電源になる。

水素とともに日本の2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に貢献する。同時に、日本同様に再生可能エネルギーの適地が少ない東南アジアなど、海外市場へのプラント輸出という産業競争力強化という面での期待も担っている。

ただ商用化には技術以外の課題も多い。大量のアンモニアを安定的に低コストで調達する仕組みが必要だ。JERAはINPEXなどと、アラブ首長国連邦の国営石油会社と提携し、現地の天然ガスを原料にアンモニアを製造する共同調査に乗り出す。化石燃料産出国にとっても、アンモニア生産が脱炭素時代における有望事業であることを示すものとして注目したい。

また経済産業省は、従来の高温高圧下で合成する技術に代わる、低温低圧によるアンモニアの合成法開発を目指し、関連予算を22年度に計上する方針。

官民で実用化への成果を着実に生み出してほしい。日本が本気で取り組む姿勢を世界に発信し、多くの国が参画することが成功への条件になる。

(2021/8/30 05:00)

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