(2021/12/8 05:00)
人権問題は対岸の火事ではない。企業はビジネスにおいて人権への対応を迫られている。
中国政府が新疆ウイグル自治区の人々を強制労働させた疑いで米政権が中国への輸入規制を強化するなど、サプライチェーン(供給網)の人権問題は大きな経営上のリスクである。
米国はユニクロを展開するファーストリテイリングが中国で縫製した綿製品の一部を輸入禁止にした。同社は「人権侵害がないことを、第三者を通じて確認している」と反論する。
企業は取引先や投資家などから、企業活動での人権への悪影響を調査し対処する「人権デューデリジェンス(DD)」の導入を求められている。
経済産業省と外務省は、日本の上場企業のサプライチェーンにおける人権に関する取り組み状況を調査した。回答した760社のうち、「人権DDを実施している」と回答した企業は半数程度で、その中で間接仕入れまで人権DDを実施する企業の割合は4分の1にとどまった。
大手だけでなく中小や海外企業を含めた取引先すべての人権への取り組みの把握には困難を伴うのは事実だ。だが人権尊重経営は企業側にもメリットがある。従業員の満足度や士気が上がり、業績向上につながる。ESG(環境・社会・企業統治)評価機関からの評価も上がり、資金調達が容易になる。
アンケートでは、売り上げ規模や海外売上比率が高いほど、人権方針の策定や人権DDの実施状況など人権対応の項目の実施率が高い傾向にあった。逆に言えば規模の小さな企業は対応が遅れている。
経産省は11月、「ビジネス・人権政策調整室」を設置した。人権侵害や強制労働などの課題を企業に周知し、対応策を促す考え。また、経団連は企業行動憲章「実行の手引き」の人権尊重の章を月内に更新する。官民で機運は加速している。
ぎりぎりまで低コスト化し、製品やサービスを売るビジネスは終わりを迎えている。人権尊重が企業の持続的な成長に不可欠と認識し、対応を強化する姿勢が求められる。
(2021/12/8 05:00)
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