(2021/12/23 05:00)
自動車産業の脱炭素への正解はまだ明確ではない。トヨタ自動車は全方位戦略に磨きをかけ、世界の脱炭素化を先導していくべきだ。
トヨタ自動車が電気自動車(EV)戦略を発表した。2030年に世界でEVを350万台販売、高級車ブランド「レクサス」は35年に新車をすべてEVにするなど、EVに関する従来の目標を大幅に引き上げた。同社はEV関連の開発・設備投資に4兆円を投じる。
一方でプラグインハイブリッド車、燃料電池車、水素エンジンなど、非EVによる脱炭素開発にも4兆円を計画する。この投資額の配分が同社の考えを明示している。EVで世界と戦えるだけの強化をするが、脱炭素への道はEVだけではないと。
世界の自動車利用の環境は多様だ。電力供給が脆弱な国もあれば、ブラジルのようにバイオ燃料が普及する国もある。日本はエネルギーの多くを化石燃料に頼り、現状ではEV化はライフサイクル全体のゼロカーボンに直結しない。
自動車の脱炭素化は、使われる国のエネルギー政策と密接に関連する。だからこそ、さまざまな技術の選択肢を提供するという同社の考えは、世界トップ企業として妥当である。
その上で取り組むべきは、自動車製造に関わる多数のサプライヤーが共に脱炭素時代を生き、新しい挑戦に乗り出すよう促す道筋を示すことである。同社は選択と集中ではなく、全方位戦略を採れる前提として、開発の効率化が実現できていることを挙げた。その土台にはサプライヤーの貢献がある。
自動車産業の未来には、脱炭素への適応だけでなく、自動運転やシェアリングなど、ビジネスモデルの大転換が予想される。既存の自動車メーカーだけでなく、「GAFA」など巨大な競合相手も待ち受ける。
全方位型の開発に投じる資金力がトヨタの強みではあるが、今後対抗する相手は、同社を上回る資金力を持つ企業たちである。覚悟を持って、自動車市場のリーダーの地位を堅持してもらいたい。
(2021/12/23 05:00)
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