産業春秋/虎の危機的な生息環境

(2022/1/6 05:00)

寅(とら)年で思い浮かぶのは国民的映画『男はつらいよ』の寅さんだろう。第12作では初春興行で「あなたの今年の運勢を祝うこの寅の絵、ね、どうぞ、お近くによって見てやって下さい」と口上を披露している。

生きた虎が日本に初めて連れてこられたのは平安時代とされるが、庶民が実物を目にしたのは明治期に動物園で飼育されてから。『虎図』で有名な江戸中期の絵師、伊藤若冲も本物を見る機会はなかった。

日本人は中国の故事成語や朝鮮民画などから、虎について想像を膨らませてきた。空想上の動物に近かったことが、抽象的だが勇猛で誇り高い独特の虎文化を育んだのだろう。

一日に千里を走るとのことわざがある虎も、生息数は20世紀初頭の10万頭から、近年は約3200頭に減少。森林伐採や密猟により9亜種のうち3亜種が絶滅した。残りの亜種も絶滅危惧種などに指定されている。

長野県の須坂市動物園で飼育される双子の兄妹は16歳になる。動物園での寿命は約20年とされる。「海外から調達が難しくなれば国内では見られなくなるかも」と飼育員の笹井恵さんは先行きを気にかける。厄払いに寅の絵を拝みながら、虎の危機的な生息環境にも思いを巡らせたい。

(2022/1/6 05:00)

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