社説/入国者の上限5000人に もう一段の規制緩和が必要だ

(2022/3/1 05:00)

科学的根拠に基づかない水際規制を続けることは、日本の国益を損ないかねない。

政府は「オミクロン株」流行に伴い実施していた水際規制措置について、きょうから日本人を含めた入国者の上限を1日当たり3500人から5000人に引き上げる。

経団連や在日米国商工会議所、欧州ビジネス協会などが緩和を求めていたことに応じたものだ。ただ、5000人はいかにも少ない。例えば在留資格の事前認定を受けていながら、日本へ入国できていない外国人留学生は、2021年末時点で約15万人いる。このままでは4月の新年度に間に合わない。

留学生の中には日本への留学を諦めて、他国に行く人も出てきている。日本で学びたい〝知日派人材〟を失うことは日本の将来にとってもマイナスだ。

ビジネスにおいても契約が延期になったり、エンジニアが来日できずに設備の稼働が遅れるなど、日本企業にとっても悪影響が及んでいる。技能実習生が来日できないことは、当人にも受け入れる日本の中小企業にとっても機会損失となる。

そもそも岸田文雄首相は先進国で最も厳しい水際規制をとるのは、オミクロン株の特性を見極め、適切な対応策を講じるための時間稼ぎと説明していた。

すでに対応策は明確だ。ワクチンの3回目接種の加速と、高齢者、中でも高齢者施設でのクラスター発生阻止である。国内で新規感染者が多数いる状況で水際規制だけを強くしても意味はない。日本のちぐはぐなコロナ対策は、海外から〝鎖国〟ともやゆされている。

海外では厳しい入国規制をとってきた豪州も、ワクチン接種などを条件に、すべての国から外国人の受け入れを再開した。ビジネスや留学だけでなく観光客も対象としている。ニュージーランドも緩和方針を表明している。

このままでは先進国で日本だけが世界に閉じた国となってしまう。ワクチン接種を前提とするなど、合理的な条件のもとで、さらに踏み込んだ規制緩和に乗り出すべきだ。

(2022/3/1 05:00)

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