社説/東証再編から1年 PBR改善は「人」「成長」投資で

(2023/4/4 05:00)

東京証券取引所の市場区分が再編されて4日で1年を迎える。明確な再編効果が現れない中、東証は株価の割安具合を測る株価純資産倍率(PBR)に着目し、これが1倍を割る企業に改善策を示すよう求めている。ただ、PBRは自社株買いによる株主還元を進めれば短期的に上昇するものの、企業価値の向上に結びつくとは限らない。企業は株主以外の従業員や取引先などのステークホルダー(利害関係者)にも目配りしつつ、成長分野への積極投資を通じて持続的な成長を目指したい。

東証は2022年4月の市場再編後の課題を議論する「フォローアップ会議」を重ね、資本収益率の改善に向けた取り組みを推進することにした。市場の評価が企業価値より割安な上場企業に改善策を促し、資本収益性で海外に見劣りする日本株の魅力を向上させる狙いである。

PBRは「株価」を「1株当たり純資産」で除した指標で、1倍を割ると株価が企業価値より割安であることを意味する。東証のプライムおよびスタンダード市場銘柄約3300社のうち約1800社が1倍割れとされる。企業は今回の1倍割れ是正要請を、資本の効率的な使い方を検証する契機としたい。

昨春の東証再編により、株主還元や資本効率向上に対する経営者の意識は高まっており、22年度の自社株買いは過去最高を更新したようだ。市場再編の際、上場基準に満たない企業300社近くをプライム市場に移行する経過措置を講じている。この措置は25年3月以降に順次終了する方針で、上場に値するPBR1倍以上を早期に達成する必要がある。ただ余剰資金の一部を自社株買いに振り向けても、効果が短期的となる可能性があることには留意したい。

企業はPBRの本質的な改善に向け、「人への投資」や成長分野への積極的な資金投入、低採算事業の見直しなどを推進することが期待される。PBR是正は物言う株主(アクティビスト)対策にもなるはずだ。

東証再編2年目、世界から投資を呼ぶ込む市場再生の節目の年となるか注視したい。

(2023/4/4 05:00)

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